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未払賃金立替払制度について

2020/02/04 09:47|カテゴリー:未分類

今回は「未払賃金立替払制度」について説明致します。

未払賃金立替払制度とは,賃金の支払の確保等に関する法律第7条に基づき,企業が破産したために,賃金が支払われないまま退職した従業員に対して,その未払賃金の一定の範囲について労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度です。

仮に未払賃金立替払制度がなかった場合,給与については企業の資産の売却等によりお金に換え,一定の資産を形成できた場合に始めて,法律に従って配当という手続きにより支払いを受けられることになります。

しかし,企業が破産する場合,企業には資産がないことがほとんどです。また,企業に一定の資産があったとしても,未納の税金や社会保険料の支払に優先的に充てられます。そのため,配当によって給与の支払を受けられるのは極めて稀であります。

加えて,裁判所に破産申立をして配当までは数ヶ月,破産する企業の規模や状況次第で1年以上かかる可能性もあります。

給与は生活していく上で必要不可欠であります。給与は毎月決まった日に支払を受けられないと住宅ローンや家賃,水道光熱費等の支払いができず日常生活に大きな影響を及ぼします。

このように,給与の未払は他の債権の未払(例えば,銀行への借入金の返済の滞りなど)と大きく異なるため,企業が破産した場合,未払の給与については一定の範囲で労働者健康福祉機構が立替えてくれる制度が未払賃金立替払制度であります。

 

次に,未払賃金立替払制度で立替えて貰える給料の範囲について説明致します。

対象となるのは,破産申立ての日から6か月前の日以降の給与です。すなわち,破産申立の日の7か月前の給与については未払賃金立替払制度の立替えの対象にはなりません。

また,立替えの対象となるのは毎月の給与や退職手当です。賞与や解雇予告手当については対象となりません。

さらに,立替払いを受けられる金額は「未払賃金の総額」の100分の80です。ただし,立替払いを受けられる金額には年齢に応じて限度額が設けられております(30歳未満は88万円,30歳以上45歳未満は176万円,45歳以上は296万円)。

 

破産はない方が良いですが,破産せざるを得ない場合に会社に尽くして下さった従業員の不利益を最小限に抑えることも経営者として重要な責務の一つと思われます。

破産を検討せざるを得ない場合にはなるべく早期に弁護士に相談しましょう。