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2020年2月

懲戒について(3)

2020/02/04 09:51|カテゴリー:解雇

1 自宅待機命令とは

労働者を懲戒するにあたって,会社内部で事実関係の調査が必要になる場合があります。たとえば,上司から部下へのセクハラが疑われる場合に,そのような事実が確実にあるといえるのかについては,関係者への聴き取り等の調査をしなければ不明な場合が多いと思われますが,加害者と疑われる上司に従前の業務を継続させたまま事実関係の調査をすることが不適切と思われる場合もあると思われます。そのような場合,事実関係を調査し,当該労働者を懲戒するかどうかを判断するまでの間,当該労働者に自宅待機を命じることがあります。これを,自宅待機命令といいますが,あくまで業務上の命令として自宅待機を義務づけているものであり,懲戒処分としての出勤停止とは異なります。

自宅待機命令について,就業規則に明記してある場合も多いですが,仮に就業規則に明記されていなかったとしても,発令することが可能です。

ただし,事実調査の必要性がない場合や不当に長期間自宅待機を命じた場合には違法と判断されることになります。

 

2 自宅待機中の賃金

自宅待機命令は,通常,事実関係がはっきりせず,懲戒をすべきか否か不明な段階で会社が調査を行うために発するものであり,会社の都合で就労を拒否することになりますので,原則として,労働者に対して,自宅待機中の賃金を支払う必要があります(出社をさせた場合に証拠隠滅のおそれがある等の緊急かつ合理的な理由がある場合には,自宅待機中の賃金を支払わなくても適法とされる可能性はありますが,実務上は,賃金全額を支払うことが多いと思われます。)。

懲戒について(2)

2020/02/04 09:50|カテゴリー:解雇

1 懲戒解雇と解雇予告手当

労働者を解雇するには,30日前までに解雇を予告するか,30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第20条第1項本文)。ただし,「…労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」については,上記解雇予告または解雇予告手当の支払をしなくてもよいとされており(労働基準法第20条第1項但し書),懲戒解雇をする場合は,上記「…労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当するとして,30日前の解雇予告も解雇予告手当の支払をしないということも可能です。

もっとも,解雇予告も解雇予告手当の支払もせずに解雇する場合には,事前に労働基準監督署長による認定(「除外認定」といいます。)を受けなければならないこととされています(労働基準表第20条第1項ただし書,同条第3項,同第19条第2項)。この除外認定を受けるには,ある程度の時間(1~2週間程度)を要します。裁判例上,除外認定を受けずに,解雇予告や解雇予告手当の支払もしないまま解雇をしたとしても,解雇が無効となるわけではないとされていますが,労働基準法の定める手続に違反することになりますので,実務上は,懲戒解雇の場合にも解雇予告手当を支払うことが多いです。

 

2 懲戒解雇と退職金

就業規則に,懲戒解雇の場合には退職金を支給しない(あるいは減額する)などと規定をする場合があります。このような規定を根拠に懲戒解雇をする場合に退職金を不支給または減額とすることが可能でしょうか。

退職金については,一般的に,賃金の後払的性格及び勤続に対する功労報償的な性格を有するものとされています。そのような観点から,裁判例上,就業規則に上記のような退職金の不支給または減額についての定めがある場合であっても,労働者のそれまでの功績を抹消(不支給の場合)または減少(減額の場合)させるほどの重大な背信行為がなければ,退職金の不支給または減額は無効となるものとされています。

退職金の不支給または減額の有効性については,背信行為の性質,当該背信行為による会社業務への影響の程度,労働者のそれまでの勤務実績,過去の処分との比較等の様々な事情を考慮して判断されることとなりますが,裁判において,退職金の全額不支給が有効とされることはあまりなく,一定割合の退職金の支払を命じられることが多いです。

したがいまして,就業規則に懲戒解雇の場合には退職金を支給しない(あるいは減額する)といった規定がある場合であっても,退職金の取扱いについては慎重に判断する必要があります。

未払賃金立替払制度について

2020/02/04 09:47|カテゴリー:未分類

今回は「未払賃金立替払制度」について説明致します。

未払賃金立替払制度とは,賃金の支払の確保等に関する法律第7条に基づき,企業が破産したために,賃金が支払われないまま退職した従業員に対して,その未払賃金の一定の範囲について労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度です。

仮に未払賃金立替払制度がなかった場合,給与については企業の資産の売却等によりお金に換え,一定の資産を形成できた場合に始めて,法律に従って配当という手続きにより支払いを受けられることになります。

しかし,企業が破産する場合,企業には資産がないことがほとんどです。また,企業に一定の資産があったとしても,未納の税金や社会保険料の支払に優先的に充てられます。そのため,配当によって給与の支払を受けられるのは極めて稀であります。

加えて,裁判所に破産申立をして配当までは数ヶ月,破産する企業の規模や状況次第で1年以上かかる可能性もあります。

給与は生活していく上で必要不可欠であります。給与は毎月決まった日に支払を受けられないと住宅ローンや家賃,水道光熱費等の支払いができず日常生活に大きな影響を及ぼします。

このように,給与の未払は他の債権の未払(例えば,銀行への借入金の返済の滞りなど)と大きく異なるため,企業が破産した場合,未払の給与については一定の範囲で労働者健康福祉機構が立替えてくれる制度が未払賃金立替払制度であります。

 

次に,未払賃金立替払制度で立替えて貰える給料の範囲について説明致します。

対象となるのは,破産申立ての日から6か月前の日以降の給与です。すなわち,破産申立の日の7か月前の給与については未払賃金立替払制度の立替えの対象にはなりません。

また,立替えの対象となるのは毎月の給与や退職手当です。賞与や解雇予告手当については対象となりません。

さらに,立替払いを受けられる金額は「未払賃金の総額」の100分の80です。ただし,立替払いを受けられる金額には年齢に応じて限度額が設けられております(30歳未満は88万円,30歳以上45歳未満は176万円,45歳以上は296万円)。

 

破産はない方が良いですが,破産せざるを得ない場合に会社に尽くして下さった従業員の不利益を最小限に抑えることも経営者として重要な責務の一つと思われます。

破産を検討せざるを得ない場合にはなるべく早期に弁護士に相談しましょう。