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働き方改革

同一労働同一賃金②

2020/02/04 09:46|カテゴリー:働き方改革

1 前回のおさらい

前回の私の記事では,「同一労働同一賃金」といっても,正社員と非正規社員が単に同じ労働作業をしているからといって同じ賃金になるというものではなく,責任の範囲,配置転換の有無,職能職位に連動した給与体系等の違いがあるのであれば,その違いに応じた賃金格差は認めるというのが現在の労働法制の基本的な考え方となっていることをお話しました。裏を返せば,正社員と非正規社員の違いから合理的に説明できない賃金格差であれば,違法となるということになります。

 

2 重要判例のご紹介

ここで,正社員と非正規社員との間の賃金格差が争われた近年の重要判例「ハマキョウレックス事件(最高裁平成30年6月1日判決)」をご紹介したいと思います。

この判例は,ともにトラック運転手である正社員と非正規社員(有期労働者)との間で,「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「住宅手当」「皆勤手当」「通勤手当」といった手当が正社員にのみ支給されていることが違法な賃金格差にあたるとして,非正規社員が訴訟を提起した事件です。

最高裁は,上記手当のうち「住宅手当」のみ適法な賃金格差であるとし,その他の手当は違法な賃金格差にあたると判断しました。違法な賃金格差にあたると判断された「無事故手当(無事故なら支給)」「作業手当(特定の作業をしたら支給)」「皆勤手当(皆勤なら支給)」「通勤手当(通勤のため支給)」は,いずれも,正社員であろうと非正規社員であろうと,その手当の条件がそろえば等しく支給されるべきという判断です。例えば「無事故手当」について言えば,無事故を条件に支給されるのなら,正社員の方が責任の範囲が広いとか,正社員だけに配置転換が予定されているとか,正社員にのみ職位職能制度があるといった違いとは無関係で,正社員でも非正規社員でも無事故であれば等しく支払われるべきという趣旨の判断です。

他方で,適法な賃金格差と判断された「住宅手当」については,正社員には転居を伴う配置転換が予定され,住居費が多額になり得ることから,正社員にのみ支給することも不合理ではないと判例は述べています。つまり,正社員と非正規社員との違いから合理的に説明できるとして適法と判断されています。

 

3 さいごに

上記判例は,あくまで対象会社の実態を認定した上で個別具体的な判断をしたものです。「無事故手当」「住宅手当」といった名称の手当であれば必ず違法・適法になると判断したものではありませんので,詳しくはご相談ください。

同一労働同一賃金

2020/02/04 09:41|カテゴリー:働き方改革

近年,「同一労働同一賃金」という言葉を各種メディアで目にすることが多くなりました。

「同一労働同一賃金」を素直に読めば,「同じ労働作業(業務)をしている人には同じだけの賃金が支払われる」という意味に読めますが,実社会を見ると,同じ職場で同じ業務をしている人でも賃金格差があるという職場がむしろ多いのではないでしょうか。

単に同じ業務をしているかどうかだけで比べ,それが同じであれば同じ賃金にするという意味で「同一労働同一賃金」を定義するのであれば,今の日本には「同一労働同一賃金」の原則を定めた法規制はありません。

現在の労働法制やメディアで言及されている「同一労働同一賃金」が問題としているのは,主として,正社員と非正規社員(契約期間の定めがある有期労働者,パートタイマー,派遣労働者等)との間の賃金格差です。通常,正社員と非正規社員とでは,同じ業務に従事しているように見えても,職務責任の範囲が異なったり,正社員には配置転換,能力や経験に応じた昇格制度,職務や職能に連動した給与体系が存在するなどの違いが設けられていることが多いでしょう。このような場合,単に業務内容だけを比べると違いがないように見えますが,その他の事情も含めて比べると,正社員と非正規社員とでは違いがあることになります。正社員と非正規社員との違いを認め,その違いの中身を特定し,その違いに応じた賃金格差であるときちんと説明できる場合には「適法な賃金格差」であり,説明できなければ「違法な賃金格差」であると考えようというのが,現在の労働法制の基本的な考え方となっています。

正社員と非正規社員の位置付けや人事制度は会社によってまちまちですので,個別具体的な判断が不可欠となります。賃金格差の問題を検討するにあたっては,その会社ごとに,正社員と非正規社員との違いの有無・内容を整理して,その違いに応じた賃金制度となっているかどうかを検討していくことが大切です。

働き方改革法案~長時間労働の是正

2019/08/18 17:29|カテゴリー:働き方改革

働き方改革法の内容として、①長時間労働の是正、②多様で柔軟な働き方の実現、③勤務間のインターバル制度の普及促進がありますが、規制の中心は長時間労働抑制の点にあります。

長時間労働抑制のための制度として、①三六協定特別条項で設定すべき延長可能時間、②三六協定の締結についての留意点、③時間外労働の管理の方法、④年次有給休暇取得促進への対応、⑤限度時間を超えて労働した場合に生ずる健康確保措置が設けられました。

一つ目の三六協定の特別条項において設定すべき延長時間の制限ですが、法律の規定では延長時間の制限はこれまでありませんでした。しかし、今回の法改正によって、限度時間が法律で明文化され、その結果罰則が適用されることになりました。罰則規定ですが、労働基準法519条の15によって、労働基準法36条の6項違反の場合が明記されており、具体的には4ヶ月以内の懲役又は30万円以下の罰金という刑罰になっています。

例外として特別条項で定めることができる範囲として、労働基準法36条5項にて、月45時間を超える時間外労働が出来る月は年に6回と定められました。また、時間外及び休日労働を合わせた時間は、単月で100時間未満でなければならない、時間外と休日労働合わせた時間は、2ヶ月〜6ヶ月平均で80時間以内でなければいけない、時間外労働は年間720時間以内でなければならないと規定されました。

大事なポイントは、単月100時間未満、2ヶ月から6ヶ月の平均80時間以内という制限は、時間外休日労働の両方を足した時間数についての規定であるが、年間720時間以内という制限は、時間外労働だけの規定であり休日労働は含まれないということです。

企業としては上記規律に違反しないように労働時間の管理をすべきですが、それぞれの規律の基準が単月100時間と平均80時間は休日労働も入ってるけれども、年間720時間というのは休日が入っていないという労働時間の管理では現場が混乱しやすいので、現場が混乱しない分かりやすい基準をですね示した方がよいでしょう。