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労務・労働問題~解雇の種類は3つ!普通解雇・懲戒解雇・整理解雇の違いと会社側の手続(運送業・熊本・八代)~

2026/10/06 10:09|カテゴリー:労務・労働問題、運送業

解雇の種類と会社側の手続を確認する弁護士のイメージ

こんにちは。弁護士法人Si-Lawです。

解雇には、大きく分けて「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があり、種類ごとに求められる理由・手続・リスクがまったく違います。どの種類で進めるのかを最初に取り違えると、後から「不当解雇」として争われたときに会社側が不利になりやすくなります。この記事では、運送業を営む熊本・八代の中小企業の経営者・人事ご担当者に向けて、解雇の種類ごとの違いと、会社側が踏むべき手順を整理します。

※最終確認日:2026年10月6日(労働基準法・労働契約法の条文に基づく一般的な解説です)。

解雇の種類は3つ|まず全体像を押さえる

「解雇」とは、会社が一方的に労働契約を終了させることです。従業員の同意で終わる「退職勧奨による合意退職」や「自己都合退職」とは別物です。会社が使える解雇は、理由の性質によって次の3つに分類されるのが一般的です。

種類 主な理由 代表例(運送業) 会社側のハードル
普通解雇 能力不足・勤務不良・傷病による就労不能など 無断欠勤の継続、点呼や運行ルールを守らない、免許失効 高い(改善の機会を与えた記録が必要)
懲戒解雇 重大な規律違反に対する制裁 飲酒運転、売上金・荷物の横領、重大な虚偽報告 非常に高い(就業規則の根拠と適正な手続が必須)
整理解雇 経営悪化による人員削減 荷主の撤退や燃料費高騰による路線・拠点の縮小 最も高い(4つの要素を総合判断)

なお、就業規則の中に「諭旨解雇」という区分を置いている会社もあります。これは懲戒解雇に相当する事案で、本人に退職届の提出を促し、応じれば懲戒解雇ではなく扱う、という温情的な処分です。法律上の独立した種類ではなく、懲戒処分の一段階として定められているものです。

すべての解雇に共通する大原則

どの種類の解雇でも、まず次の大原則をクリアしなければなりません。ここを外すと、種類の選び方以前に解雇が無効になります。

客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性(労働契約法16条)

労働契約法16条は、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、権利を濫用したものとして無効になると定めています。裁判所は、解雇を非常に厳しく審査します。「問題のある従業員だから辞めてもらう」という感覚だけでは足りず、理由の重さと、会社が改善の機会を与えたかどうかが見られます。

30日前の予告か、予告手当の支払い(労働基準法20条)

会社が従業員を解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。予告日数が30日に足りない場合は、その不足日数分の手当を払えば足ります。たとえば予告が10日前なら、20日分の平均賃金を支払う計算です。

解雇が法律で禁止されている期間(労働基準法19条など)

  • 業務上のケガ・病気で療養のために休業している期間と、その後30日間
  • 産前産後の休業期間と、その後30日間
  • 労働基準監督署への申告、労働組合活動、育児・介護休業の取得などを理由とする解雇

運送業では、荷役や運転中の業務災害で休業している従業員がいるケースが少なくありません。休業中は原則として解雇できないため、「勤務できないから解雇」と考える前に、労災かどうかを必ず確認してください。

就業規則への記載と解雇理由証明書

解雇の事由は、就業規則に必ず記載しておく必要があります(労働基準法89条)。また、従業員から請求があれば、会社は解雇の理由を記した証明書を遅滞なく交付しなければなりません(同法22条)。後から理由を付け足したり変更したりすると、説明の一貫性を疑われます。

普通解雇|能力不足・勤務不良で進めるときの注意点

普通解雇は、懲戒解雇・整理解雇以外の解雇を指し、実務で最も多い類型です。理由は「能力不足」「勤務態度不良」「傷病で働けない」など幅広くあります。

改善の機会を与えたかが最大の争点

裁判では、会社が注意・指導・配置転換などで改善の機会を与えたかが重視されます。いきなりの解雇は、有効と判断されにくくなります。運送業の例では、遅刻や無断欠勤が続く従業員に対し、次のような対応を段階的に記録しておくことが大切です。

  • 日時・内容を書面にした口頭注意と、本人が受け取った事実の記録
  • 指導書や面談記録による、改善してほしい点と期限の明示
  • 配車や担当ルートの調整など、会社として行った工夫
  • 改善が見られなかった事実(遅刻・欠勤日数、事故やクレームの件数)

無断欠勤を理由とするケースは、無断欠勤で解雇は何日から?「2週間」の意味と会社側の対応で詳しく解説しています。また、入社間もない従業員の能力不足については試用期間中の能力不足による解雇はできる?もあわせてご覧ください。

運送業で多い「免許・資格」の問題

運転免許が取消し・停止になった、必要な資格を失ったという場合は、業務が遂行できなくなるため、普通解雇の理由になり得ます。ただし、事務職や倉庫内作業への配置転換が可能かどうかを検討せずに解雇すると、「解雇回避の努力が足りない」と判断されるおそれがあります。会社の規模や職種の実情に応じて、配置転換の余地を検討した経緯を残しておきましょう。

懲戒解雇|最も重い処分だからこそ手続を厳格に

懲戒解雇は、従業員の重大な規律違反に対する制裁として行う解雇です。退職金の全部または一部を不支給にできる旨を就業規則で定めている会社も多く、従業員への不利益が極めて大きいため、有効と認められるハードルは非常に高くなります。

懲戒解雇が有効になるための条件

  • 就業規則に、懲戒の種類と懲戒事由があらかじめ明記されていること(労働契約法15条の前提)
  • 違反行為の内容と処分の重さが釣り合っていること(相当性)
  • 本人に弁明の機会を与えるなど、適正な手続を踏んでいること
  • 過去に同種の違反を行った他の従業員との処分の均衡がとれていること

飲酒運転・横領など運送業で想定される事案

運送業で懲戒解雇が検討される典型例は、酒気帯び・飲酒運転、売上金や預かり荷物の着服、事故の隠蔽や点呼の虚偽報告です。これらは事業の存続や荷主からの信頼に直結するため、重い処分が許容されやすい類型です。それでも、事実関係を十分に調査せず、本人の言い分も聞かないまま処分すると、手続の不備を理由に無効とされる危険があります。

解雇予告の「除外認定」とは

労働者の責に帰すべき重大な理由があるときは、労働基準監督署長の認定(除外認定)を受ければ、解雇予告も予告手当も不要にできます(労働基準法20条1項ただし書き)。ただし、認定を受けたからといって解雇が有効になるわけではなく、あくまで予告手続を省略できるだけです。認定には時間がかかるため、実務では予告手当を支払って解雇する選択をするケースも多くあります。

迷ったら、懲戒解雇ではなく、まず普通解雇や退職勧奨を検討するのも現実的な判断です。懲戒解雇は争われやすく、無効と判断されたときの経済的リスク(未払い賃金の遡及支払いなど)が大きいためです。

解雇3種類の押さえどころの図解

整理解雇|経営悪化のときに問われる4つの要素

整理解雇は、経営不振などを理由に人員を削減するための解雇です。従業員に落ち度がないため、裁判所の審査は特に厳しく、次の4つの要素を総合的に考慮して有効かどうかが判断されます。

要素 中身 会社側が準備すること
①人員削減の必要性 経営上、人員を減らさざるを得ない事情があるか 決算書、受注・売上の推移、荷主の撤退の資料
②解雇回避の努力 解雇以外の手段を尽くしたか 役員報酬の減額、新規採用の停止、配置転換、希望退職の募集
③人選の合理性 誰を対象とするかの基準が公正か 勤務成績・勤続年数など客観的な基準の設定
④手続の相当性 従業員や労働組合へ十分に説明・協議したか 説明会・個別面談の実施と記録

運送業では、燃料価格の高騰や、荷主の撤退・取引縮小で売上が急減する場面があります。それでも、まず運行ルートの再編、残業の削減、役員報酬の見直しなど、解雇以外の手段を尽くしたかが問われます。経営が苦しいという事情だけで、整理解雇が認められるわけではありません。資金繰りが厳しい場合は、運送業の資金繰り悪化と再生・廃業の選択もあわせて検討してください。

有期契約社員・契約期間中の解雇は特に厳しい

期間の定めのある契約(契約社員やパートタイマー)を、期間の途中で解雇する場合は、労働契約法17条により「やむを得ない事由」が必要です。これは、期間の定めのない社員に対する解雇よりもさらに厳しい基準とされています。繁忙期が終わったから、というだけの理由では足りません。契約期間が満了するのを待ち、更新しないという形(雇止め)を検討するほうが、リスクを抑えられる場合があります。ただし、更新を繰り返している場合は雇止めにも制限があるため、事前に専門家へ確認することをおすすめします。

試用期間中の解雇

試用期間中でも、解雇には客観的に合理的な理由が必要です。ただし、採用から14日以内であれば解雇予告は不要で、14日を超えたら通常どおり30日前の予告か予告手当が必要になります(労働基準法21条)。

解雇の前に検討したい「退職勧奨」という選択肢

解雇は、会社が一方的に行うため、争いになる可能性が高い手段です。そのため実務では、まず従業員に合意退職を働きかける「退職勧奨」が検討されます。退職勧奨は、従業員が自由な意思で応じる限り、解雇ではありません。ただし、長時間の面談を繰り返したり、「辞めなければ解雇する」と威圧したりすると、違法な退職強要と評価され、慰謝料などの支払いを命じられるおそれがあります。

  • 面談は短時間・少人数で行い、回数も常識的な範囲にとどめる
  • 「退職するかどうかは自由」と明確に伝える
  • 合意する場合は、退職合意書に条件(退職日、退職金・解決金など)を明記する
  • 応じなかった場合に、いきなり解雇へ進まず、他の手段も検討する

解雇を巡る手続の流れ(会社側の実務)

実際に解雇を検討するときの、基本的な進め方は次のとおりです。

  • ①事実関係の確認と証拠の収集(勤怠、指導記録、事故報告書など)
  • ②就業規則の解雇事由・懲戒事由への該当性の確認
  • ③本人への注意・指導・弁明の機会の付与(記録に残す)
  • ④配置転換・退職勧奨など、解雇以外の手段の検討
  • ⑤解雇の種類と理由の確定(後から理由を変えない)
  • ⑥30日前の予告または予告手当の支払い、解雇通知書の交付
  • ⑦退職金・未払い賃金の精算、離職票などの手続

解雇した後の手続として、離職票の交付や社会保険の喪失手続も必要です。会社都合退職として扱われた場合、雇用関係の助成金の支給に影響が出ることがあるため、助成金を活用している会社は事前に確認しておきましょう。

解雇通知書に書くべきこと|よくある失敗例

解雇が有効かどうかの争いでは、会社が当初どのような理由を伝えたかが重視されます。通知書や面談の記録に書いた内容と、後で裁判で主張する内容がずれると、信用性を疑われます。解雇通知書には、最低でも次の項目を記載してください。

  • 解雇する従業員の氏名と、通知する日付
  • 解雇の日(予告する場合は、予告日から30日以上空けた日)
  • 解雇の理由(就業規則のどの条項に該当するかを含めて、具体的に)
  • 予告手当を支払う場合は、その金額と支払日
  • 退職金・未払い賃金・私物や貸与品(制服、ETCカード、運行記録計のデータなど)の精算方法

実務でよくある失敗例

  • 感情的になって、その場で口頭解雇をしてしまい、後で理由が説明できなくなる
  • 事故やミスを理由にしながら、過去の同種事案では処分していなかったため、不公平だと指摘される
  • 「能力不足」を理由にしながら、評価や指導の記録が一切残っていない
  • 社会保険の喪失手続や離職票の記載で、会社が主張する理由と食い違う内容を書いてしまう
  • SNSやLINEグループで、他の従業員にも解雇の経緯を話してしまい、名誉毀損などの別のトラブルに発展する

特に、離職票の離職理由は、会社と従業員の双方が確認する公的な書類です。解雇の理由と矛盾しない記載にそろえ、本人が異議を述べている場合は、記載の前に専門家へ相談してください。

熊本・八代の中小企業が気をつけたいポイント

熊本・八代のような地方では、従業員同士や取引先とも顔見知りであることが多く、人間関係への配慮から、指導や記録がおろそかになりがちです。しかし、後から紛争になったとき、会社を守るのは「記録」です。次の3点を、日頃から整えておくことをおすすめします。

  • 就業規則の見直し:解雇事由・懲戒事由が具体的に書かれているか、運送業の実態(点呼・運行管理・アルコールチェック)に合っているかを確認する
  • 指導記録の習慣化:注意や指導をした日付・内容・本人の反応を、簡単でも書面に残す
  • 相談の早期化:解雇を決める前に、顧問弁護士や専門家へ相談する

顧問弁護士がいれば、解雇を決める前の段階で、理由の整理や手続の確認を受けられます。顧問契約の費用や活用方法は、顧問弁護士の費用相場は月額いくら?で解説しています。

よくある質問

Q1. 解雇予告手当は、どのように計算しますか?

原則として、直前3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割った「平均賃金」に、不足している予告日数を掛けて計算します。たとえば、平均賃金が1日1万円で、30日分の予告手当を払う場合は30万円です。

Q2. 懲戒解雇にすれば、退職金は必ず払わなくてよいですか?

いいえ。退職金を不支給にできるのは、就業規則にその旨の定めがあり、かつ、それまでの勤続の功を全く抹消するほどの背信性がある場合に限られます。事案によっては、一部の支払いを命じられることもあります。

Q3. 従業員が「解雇は不当だ」と主張してきたら、どうなりますか?

労働審判や訴訟で解雇の有効性が争われ、無効と判断された場合、解雇後の期間の賃金(バックペイ)を支払う義務が生じることがあります。解決まで長引くほど、金額が膨らむ点に注意が必要です。早い段階で、交渉による解決も視野に入れましょう。

Q4. 口頭で「明日から来なくていい」と伝えただけでも解雇になりますか?

口頭の通告でも解雇の意思表示になり得ますが、予告や理由の整理が不十分なため、トラブルになりやすい方法です。解雇する場合は、解雇通知書を書面で交付し、理由・解雇日を明記してください。

まとめ

  • 解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があり、種類ごとに理由と手続が異なる
  • どの解雇も、客観的な合理性と社会的相当性(労働契約法16条)が必要で、30日前の予告か予告手当(労働基準法20条)が原則
  • 普通解雇は「改善の機会を与えた記録」、懲戒解雇は「就業規則の根拠と適正な手続」、整理解雇は「4つの要素」が決め手
  • 迷ったら退職勧奨・配置転換など、解雇以外の手段を先に検討する
  • 解雇を決める前に、専門家へ相談するのが最も安全
【根拠法令・確認日】労働基準法19条・20条・21条・22条・89条/労働契約法15条・16条・17条(2026年10月6日確認)。個別の事案によって結論が変わるため、実際の対応は専門家にご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事情に応じた判断は専門家へのご相談をおすすめします。企業法務でお悩みの際は、弁護士法人Si-Law(八代市)へお気軽にご相談ください。

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