BLOG 法律相談ブログ
労務・労働問題~無断欠勤で解雇は何日から?「2週間」の意味と会社側の対応(介護事業所の注意点つき)~
2026/09/27 09:19|カテゴリー:介護事業、労務・労働問題
こんにちは。弁護士法人Si-Lawです。
「社員が無断欠勤を続けていて、連絡もつかない。解雇してよいのか」。会社や事業所の経営者・人事担当の方から、こうしたご相談をよくいただきます。
結論から申し上げると、「何日無断欠勤したら解雇できる」という法律上の日数基準はありません。解雇が有効かどうかは、欠勤の理由、会社がどれだけ連絡・督促をしたか、就業規則の定め、それまでの指導歴などを総合して判断されます。
そのうえで、実務では「2週間程度」がひとつの目安として語られます。ただしこの「2週間」は、主に労働基準監督署の「解雇予告の除外認定」に関する行政通達に由来する数字です。「14日たてば解雇は有効」という意味ではない点に注意が必要です。
本記事では、無断欠勤する社員への会社側の対応を、初日の安否確認から解雇・退職扱い、事後処理、再発防止の就業規則整備まで順番に解説します。人手不足の影響が大きい介護事業所での注意点も、1章を設けて取り上げます。

無断欠勤で解雇できる?「何日」という法定基準はない
解雇の有効性は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」で決まる
労働契約法16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利の濫用として無効になると定めています。懲戒解雇の場合は、同法15条(懲戒権の濫用)の審査も加わります。
無断欠勤は、労働契約の基本である「働く義務」を果たしていない状態です。解雇の理由になり得ることは間違いありません。ただし、裁判所は次のような事情を細かく見ます。
- 欠勤の日数・期間(連続か、断続的か)
- 欠勤に正当な理由・やむを得ない事情があったか(病気・事故・ハラスメントなど)
- 会社が連絡・出勤の督促をしたか、それに本人がどう応じたか
- 過去にも同様の欠勤があり、注意や懲戒処分をしていたか
- 就業規則に解雇事由・懲戒事由として定めがあるか
「2週間」の目安はどこから来たのか
よく聞く「2週間」という数字の主な出どころは、解雇予告の除外認定に関する行政通達です。労働者の責めに帰すべき事由の例として、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています(昭和23年11月11日基発1637号、昭和31年3月1日基発111号)。
これは「労基署が、予告なし(予告手当なし)の即時解雇を認める基準」の話です。解雇そのものが民事上有効かどうかとは別の問題です。
とはいえ、裁判例でも、2週間程度以上の無断欠勤が続き、督促にも応じない事案では懲戒解雇が有効と判断される傾向があります。反対に、数日程度の欠勤でいきなり解雇した事案では、無効と判断されるリスクが高くなります。個別事情で判断が分かれるため、「2週間」はあくまで対応を検討し始める目安と考えてください。
有期契約社員・パートの場合は、さらに慎重に
契約期間の定めがある社員を期間の途中で解雇するには、労働契約法17条の「やむを得ない事由」が必要です。正社員の解雇より厳しく判断されます。
まず雇用契約書・労働条件通知書で契約期間と更新条項を確認し、期間満了での雇止めとどちらが適切かも検討してください。
| 欠勤の状況 | 解雇の考え方(一般的な傾向) |
|---|---|
| 数日程度・初めての無断欠勤 | いきなりの解雇は無効リスクが高い。まず連絡・注意指導 |
| 断続的な無断欠勤を繰り返し、注意・懲戒後も改善しない | 指導歴の記録があれば解雇を検討し得る |
| 2週間程度以上連続し、書面の督促にも応じない | 解雇・退職扱いを検討し得る。欠勤理由の確認は必須 |
| 病気・ハラスメント等が原因と疑われる | 日数にかかわらず慎重に。休職等の検討が先 |
無断欠勤でも解雇してはいけない・慎重にすべきケース
精神的な不調が疑われる場合
無断欠勤の背景に、うつ病などのメンタル不調があるケースは少なくありません。
最高裁平成24年4月27日判決(日本ヒューレット・パッカード事件)は、被害妄想など精神的な不調から約40日間欠勤した社員を、無断欠勤を理由に諭旨退職処分とした事案で、処分を無効と判断しました。会社としては、精神科医による健康診断を実施し、その結果に応じて治療を勧めたうえで、休職等の処分を検討してその後の経過を見るなどの対応をとるべきだった、という趣旨です。
実務では、就業規則の根拠や具体的な事情に応じて、産業医面談、主治医の診断書の提出依頼、専門医の受診勧奨や受診命令を検討します。
「連絡がない=怠けている」と決めつけず、欠勤前の様子(遅刻の増加、表情の変化、周囲とのトラブル)を振り返ることが大切です。
ハラスメントや職場環境が原因の場合
上司からのパワハラや同僚とのトラブルが原因で出社できなくなっている場合、会社側にも職場環境配慮義務の問題が生じます。この状態で解雇すれば、解雇無効に加えて、ハラスメントについての損害賠償を請求されるおそれもあります。
本人と連絡がとれたら、欠勤の理由を具体的に聞き取り、ハラスメントの申告があれば事実調査を先に行います。
さらに、業務上のハラスメント等が原因で病気になり、療養のため休業している場合は、その休業期間とその後30日間は原則として解雇できません(労働基準法19条)。労災申請の有無や、業務が原因かどうかも確認しましょう。
事故・災害・入院など連絡できない事情がある場合
交通事故や急病で入院していた、災害で連絡手段が絶たれていた、といった場合は、連絡がなかったこと自体に「やむを得ない事情」があります。熊本では大きな地震を経験していますので、災害時の欠勤は無断欠勤と同列に扱わないルールを決めておくと安心です。
無断欠勤が始まったら:初日から2週間の対応手順
無断欠勤への対応では、事実経過を客観的に記録しておくことが大切です。安否確認や業務調整を適正に進めるためにも、後日の説明に耐えるためにも、やり取りはすべて日時とともに残してください。

初日〜3日目:連絡がつかない・音信不通なら、まず安否確認
最初に考えるべきは、処分ではなく本人の安全です。一人暮らしの社員が自宅で倒れている可能性もあります。
- 電話・SMS・メール・社内チャットなど複数の手段で連絡し、発信履歴を保存する
- つながらなければ、緊急連絡先の家族や身元保証人に安否確認の連絡をする
- 必要に応じて自宅を訪問する(2名で行き、記録を残す。玄関先での確認にとどめ、敷地・室内に無断で立ち入らない)
- 生命の危険が疑われるときは、警察への相談もためらわない
家族や身元保証人に連絡するときは、目的を「安否確認」に限定します。「解雇を考えている」「懲戒にする」といった不要な情報は伝えないようにしましょう。退職の意思は、原則として本人から確認します。
あわせて、貸与しているパソコン・スマートフォン、メールやクラウドサービスのアカウントは、データを保全しつつ、利用停止やパスワード変更を検討します。
1週間前後:書面で出勤を督促する
連絡がつかない状態が続く場合は、書面で出勤と連絡を求めます。「○月○日までに出勤するか、欠勤の理由を連絡してください。連絡がない場合は就業規則に基づき処分を検討します」といった内容です。懲戒処分を検討するなら、「欠勤について弁明があれば○月○日までに書面で提出してください」と弁明の機会も書き添えておきます。
送付は内容証明郵便(配達証明付き)と普通郵便(特定記録)を併用するのが実務の定石です。内容証明は不在で戻ってくることがあるため、ポストに届く普通郵便も合わせて送ります。メール・SMSでも同じ内容を送っておきます。
連絡がとれたら:欠勤理由を聞き取り、対応を選ぶ
本人と連絡がとれた場合は、欠勤の理由を聞き取り、記録します。体調不良であれば診断書の提出を求め、休職制度の利用を検討します。
理由がなく、本人も「もう辞めたい」という意向であれば、退職届を提出してもらうのが最も紛争の少ない解決です。郵送で退職届の用紙を送り、返送してもらう方法もあります。
ただし退職勧奨は、本人の自由な意思による退職を促すものです。長時間・多数回の面談や、「退職しなければ懲戒解雇にする」といった過度な示唆は避け、やり取りを記録しておきましょう。
残しておくべき証拠
| 証拠 | ポイント |
|---|---|
| 出勤簿・タイムカード・シフト表 | 欠勤日を特定できるもの |
| 電話の発信履歴・メール・SMSの画面 | 日時と内容が分かる形で保存 |
| 督促書面の控え・配達証明 | 到達・不在返送の記録も保管 |
| 対応経過メモ | 誰が・いつ・何をしたかを時系列で |
| 過去の注意・指導・懲戒の記録 | 繰り返しの欠勤なら特に重要 |
普通解雇・懲戒解雇・退職扱い・退職勧奨の違い
無断欠勤が続く社員との関係を終わらせる方法は、解雇だけではありません。会社にとってのリスクと手間を比べて選びます。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 退職勧奨・合意退職 | 本人に退職を促し、退職届をもらう | 最も紛争が少ない。強要にならないよう注意 |
| 普通解雇 | 勤務不良を理由に労働契約を解消 | 原則30日前の予告か予告手当が必要 |
| 懲戒解雇 | 職場秩序違反への最も重い制裁 | 就業規則の根拠と手続が必須。有効性の審査は厳しい。懲戒解雇でも原則として予告か予告手当が必要(除外認定を受けた場合を除く) |
| 当然退職(自然退職) | 就業規則の定めにより一定期間の行方不明で退職扱い | 規定が必要。実質は解雇と同様に審査されることがある |
懲戒解雇を選ぶ場合の注意
懲戒解雇は、退職金の不支給・減額と結びつけられることが多く、社員への打撃が大きい処分です。そのため、就業規則に懲戒事由として「正当な理由なく無断欠勤が○日以上に及んだとき」などの定めがあること、処分の重さが行為に見合っていることが求められます。
就業規則に懲戒委員会などの手続が定められていれば、それに従うことも必要です。
また、退職金の不支給・減額には退職金規程の定めが必要です。懲戒解雇が有効でも、全額不支給が認められるのは、それまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信性がある場合に限られやすく、一部の支給を命じられることもあります。
迷う場合は、懲戒解雇ではなく普通解雇を選ぶ、あるいは退職勧奨で合意退職を目指す方が、紛争リスクを抑えられることが多いです。
当然退職(自然退職)規定の限界
「行方不明となり、○日以上連絡がとれないときは、その日をもって退職とする」という規定を就業規則に置く会社が増えています。所在不明で解雇通知が届かない場合の選択肢になり得ます。ただし、解雇規制を潜脱するような運用はできません。
ただし、この規定があれば何でも退職扱いにできるわけではありません。
- 行方不明型(本人と一切連絡がとれない):規定が適用しやすい典型場面
- 出社拒否型(連絡はとれるが出社しない):実質は会社からの一方的な契約終了なので、解雇と同じように合理性・相当性が問われやすい
病気やハラスメントが原因だった場合には、規定を適用した退職扱いが無効と争われる可能性もあります。規定の文言と運用は、専門家と一緒に確認しておくことをおすすめします。
解雇通知の出し方と、本人に届かないときの対処
解雇は「相手に届いて」初めて効力が生じる
解雇の意思表示は、相手方に到達した時から効力を生じます(民法97条)。社内で解雇を決めても、本人に届いていなければ、法的には雇用が続いていることになります。
解雇通知書には、解雇日、解雇の理由(就業規則の該当条文)、予告手当や最終給与の扱い、貸与品の返却方法などを記載します。督促と同じく、内容証明郵便と普通郵便の併用で送るのが基本です。
受取拒否・不在で戻ってきた場合
本人が内容証明の受け取りを正当な理由なく拒否した場合は、到達が認められる余地があります。
不在のまま保管期間が過ぎて返送された場合は、本人が内容を推知でき、受け取ることも容易だったかといった事情によって判断が分かれます(最高裁平成10年6月11日判決)。確実とはいえません。
普通郵便やメール・SMSでも同じ内容を送り、「本人が内容を知り得た」状況を重ねておくことが重要です。
所在不明なら「公示による意思表示」
本人がどこにいるか全く分からない場合には、公示による意思表示(民法98条)という制度があります。簡易裁判所に申し立て、裁判所の掲示場への掲示と官報等への掲載を経て、一定期間が経過すると意思表示が到達したものとみなされます。
申立てには、住所調査を尽くしたことの説明など手間と時間がかかります。
解雇理由証明書を求められたら
社員から請求があれば、会社は解雇理由証明書を遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条。予告期間中の請求も含みます)。欠勤日、督促日、応答の有無、適用した就業規則の条項など、具体的な事実を整理して記載し、後日の主張と矛盾しないようにします。
そのため、あらかじめ当然退職規定を整備しておく方が、実務上は負担が軽くなります。
解雇予告手当と「除外認定」の考え方
原則は30日前予告か、30日分以上の予告手当
労働基準法20条により、解雇するときは原則として30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。これは懲戒解雇でも同じです。
除外認定を受ければ予告手当なしの即時解雇も
「労働者の責めに帰すべき事由」による解雇で、労働基準監督署長の認定(除外認定)を受けた場合は、予告も予告手当もなしで即時に解雇できます。前述の「2週間以上の無断欠勤で督促に応じない場合」は、この認定の目安です。
除外認定について押さえておきたい点は次のとおりです。
- 予告手当なしの即時解雇について、行政上の確認を受ける手続。実務上は解雇する前に認定を受けるのが安全
- 申請には、出勤簿、連絡・督促の記録、就業規則、本人の応答状況などの資料が必要
- 労基署の調査があり、認定までに一定の日数がかかる
- 認定されなければ、予告または予告手当が必要になる
- 認定を受けても、解雇が民事上有効かどうかは別問題
急ぐ場合は、予告手当を支払って即時解雇するという選択肢もあります。費用と時間を比べて判断します。
連絡がとれない社員への予告手当は、通常の給与口座へ振り込み、解雇通知書に振込日と金額を明記します。解雇の効力は通知が本人に届いた時点で生じるため、前章の「到達の確保」とセットで進めてください。
給与・社会保険・私物など退職後の事後処理
主な手続と期限
| 手続 | 期限の目安 | 本人と連絡がとれない場合の注意 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金の資格喪失届 | 退職日の翌日から5日以内 | 保険証の回収ができなくても届出は進める |
| 雇用保険の資格喪失届・離職証明書 | 退職日の翌日から10日以内 | 離職票は本人住所へ郵送 |
| 最終給与の支払い | 本人から請求があれば7日以内(労基法23条) | 欠勤控除・法定控除は可。貸与品未返却の損害などを一方的に差し引くのは不可(賃金全額払いの原則) |
| 住民税(特別徴収)の異動届 | 退職の翌月10日まで | 普通徴収への切替を市町村へ届出 |
退職日・解雇日が確定していない段階で手続を進めると、後で訂正が必要になります。日付が固まるまでは、弁護士や社会保険労務士に確認しながら進めてください。
なお、無給の欠勤中も雇用関係が続く限り社会保険料は発生し、本人負担分は会社が立て替える形になります。精算方法もあらかじめ確認しておきましょう。
また、離職理由の扱い(会社都合か、重責解雇かなど)は、雇用関係の助成金の受給要件に影響する場合があります。助成金を受けている会社は、社労士やハローワークに確認しておきましょう。
ロッカーの私物・貸与品の扱い
ロッカーや机に残された私物は、会社の判断で勝手に処分してはいけません。
- 勝手に廃棄・開封しない(写真を撮って一覧を作る)
- 一定期間保管し、書面で引取りを催告する
- 就業規則に「退職後○日を経過した残置物の取扱い」を定めておく
制服・鍵・社用スマートフォンなどの貸与品は、解雇通知書や退職届の送付時に返却方法を指定して回収します。
介護事業所で無断欠勤が起きたときの注意点
無断欠勤への対応の基本は業種を問いませんが、介護事業所では特有の事情があります。熊本・八代でも、小規模な事業所ほど一人の欠勤の影響が大きくなりがちです。
人員配置基準とシフトの穴
介護サービスには、サービス種別ごとに人員配置基準があります。欠員の状態が続くと、基準を満たせず報酬の減算対象となる場合があります(具体的な要件はサービス種別によって異なります)。
特に入所系の夜勤は、一人の欠勤が利用者の安全に直結します。無断欠勤への対応と並行して、次の準備をしておきましょう。
- 欠勤が出たときの代替要員の連絡網
- 管理者が勤務に入る場合の手順
- 欠員が長引く場合の、指定権者(県・市)への相談の目安
他の職員の負担と、処分の公平性
無断欠勤を放置すると、穴を埋める職員が疲弊し、連鎖的な離職につながります。一方で、焦って強い処分をすると、他の職員から「次は自分かも」と受け止められることもあります。
「連絡のルール」「督促の手順」「処分の基準」をあらかじめ明文化し、全員に同じルールを適用することが、職場の信頼を守ることにもつながります。
外国人職員が無断欠勤した場合
特定技能や技能実習などの外国人職員が無断欠勤・所在不明となった場合は、雇用契約上の対応に加えて、在留資格に関する届出や関係機関への連絡が必要になることがあります。
- 離職時のハローワークへの外国人雇用状況の届出
- 在留資格に応じた出入国在留管理庁への届出
- 技能実習なら監理団体、特定技能なら登録支援機関への連絡
技能実習制度は育成就労制度への移行が予定されており、届出先や運用も変わります。届出先や期限は在留資格ごとに異なり、制度改正も多い分野です。早めに監理団体・登録支援機関や専門家に相談してください。
再発防止:就業規則と職場の仕組みを整える
就業規則で確認したい5つの規定
無断欠勤のトラブルは、起きてから対応するより、就業規則で備えておく方がはるかに楽です。顧問先の就業規則を拝見すると、次の点が抜けていることがよくあります。
- 欠勤連絡のルール:誰に、いつまでに、どの方法で連絡するか
- 懲戒事由:「正当な理由なく無断欠勤が○日以上に及んだとき」の明記
- 当然退職規定:行方不明で○日以上連絡がとれない場合の退職扱い
- 休職規定:メンタル不調の場合の受診命令・休職の手順
- 残置物の取扱い:退職後の私物の保管期間と処分方法
就業規則は、社員に周知されていなければ効力が認められません(懲戒処分の根拠としても周知が前提です)。「作ったけれど職員は見たことがない」という状態では、いざというときに使えません。常時10人以上の事業場では、労働者代表の意見書を添えて労働基準監督署へ届け出る義務もあります。
また、既存の就業規則に当然退職規定や厳しい懲戒事由を後から追加する場合は、不利益変更として合理性が問われることがあります。変更の必要性と内容の相当性を整理して進めましょう。
入社時に確認しておくこと
緊急連絡先(家族)の登録、身元保証書の取得も、安否確認の場面で役立ちます。身元保証書については、次の点を確認しておきましょう。
- 保証書の日付と存続期間(身元保証法により、期間の定めがなければ原則3年、定めても最長5年)
- 個人が保証人になる場合の極度額の記載(2020年4月1日以降に締結・更新した身元保証契約は、極度額の定めがないと無効)
- 更新の手続をしているか
中小企業こそ「相談できる窓口」を
無断欠勤の多くは、ある日突然ではなく、小さなサインの積み重ねの末に起こります。人事部のない中小企業や小規模な事業所では、社長や施設長が一人で抱え込みがちです。
面談の機会を定期的に設ける、ハラスメントの相談窓口を外部にも置く、といった仕組みが、結果的に無断欠勤と解雇トラブルの両方を減らします。
よくある質問
Q. 3日間無断欠勤した社員を解雇できますか?
初めての無断欠勤で3日程度なら、いきなりの解雇は無効と判断されるリスクが高いといえます。まず連絡・事情確認と注意指導を行い、繰り返す場合は段階的な懲戒処分を検討してください。
Q. 無断欠勤の日の給料は払う必要がありますか?
働いていない日の賃金は、ノーワーク・ノーペイの原則により支払う必要はありません。ただし、欠勤控除の計算方法は就業規則・賃金規程に従います。懲戒としての減給には、労働基準法91条の上限があります。
Q. 退職代行から連絡が来た場合は?
まず、代行者が弁護士・労働組合・民間業者のいずれかを確認します。民間業者は本人の意思を伝える使者にとどまるため、退職日や未払賃金などの交渉には応じず、本人(または代理人弁護士)とやり取りします。
本人の意思は、署名入りの退職届や本人からのメール等で確認しましょう。期間の定めのない雇用なら、会社が承諾しなくても、申入れから原則2週間で退職が成立します(民法627条)。無理に懲戒解雇にこだわるより、退職として処理し、貸与品の返却や書類の送付先を確認する方が紛争になりにくいことが多いです。
Q. 解雇した社員から不当解雇だと言われたら?
労働審判や訴訟で解雇が無効と判断されると、解雇後の賃金(バックペイ)をまとめて支払うよう命じられることがあります。内容証明が届いたり、労働組合から団体交渉を申し入れられたりした段階で、早めに弁護士へご相談ください。
まとめ
- 「何日無断欠勤したら解雇できる」という法定基準はない。欠勤理由・督促の経過・就業規則・指導歴で判断される
- 「2週間」は主に除外認定通達の目安。解雇の有効性とは別に考える
- 初動は処分より安否確認。連絡・督促はすべて記録し、書面は内容証明+普通郵便で
- メンタル不調やハラスメントが疑われるときは、日数にかかわらず慎重に。業務上の疾病で休業中は解雇制限(労基法19条)がある
- 有期契約社員の期間途中の解雇には「やむを得ない事由」(労契法17条)が必要
- 所在不明なら公示による意思表示(民法98条)。事前に当然退職規定を整えておくと負担が軽い
- 介護事業所では配置基準とシフトの穴、外国人職員の届出にも注意
- 就業規則の欠勤連絡ルール・懲戒事由・当然退職・休職・残置物の規定を見直しておく
「今まさに社員と連絡がとれない」「就業規則の規定がこれで足りるか見てほしい」といった段階からご相談いただけます。オンラインでのご相談にも対応しています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の事情に応じた判断は専門家へのご相談をおすすめします。企業法務でお悩みの際は、弁護士法人Si-Law(八代市)へお気軽にご相談ください。
カテゴリー
月刊アーカイブ
最近の投稿
- 企業コンプライアンス~ハラスメント相談窓口の設置義務と運用|医療機関の担当者・周知・外部委託を熊本の弁護士が解説~
- 労務・労働問題~管理職に残業代は出ない?管理監督者の要件と名ばかり管理職のリスク(建設業の現場所長の注意点つき)~
- 顧問契約~顧問弁護士の費用相場は月額いくら?中小企業のメリット・選び方と製造業の活用例(熊本・八代)~
- 労務・労働問題~パワハラは訴えたもん勝ち?訴えた人負け?会社側の対応手順と慰謝料相場(建設業の現場指導の注意点つき)~
- 労務・労働問題~無断欠勤で解雇は何日から?「2週間」の意味と会社側の対応(介護事業所の注意点つき)~
- 事業再生・法人破産~製造業の資金繰り悪化と私的整理・民事再生の選び方(熊本・八代)~
- 債権回収~不動産業の家賃滞納・賃料未払いと建物明渡しの進め方(熊本・八代)~
- 契約書の作成・確認~サービス業の利用規約・キャンセル料と業務委託契約書~
- 労務・労働問題~飲食店の労務管理とアルバイト・店長の残業代対策(熊本・八代)~
- 工事代金の未払い・契約書なしでも請求できる?回収5ステップと建設業法を熊本の弁護士が解説