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働き方改革法案~長時間労働の是正
2019/08/18 17:29|カテゴリー:働き方改革
働き方改革法の内容として、①長時間労働の是正、②多様で柔軟な働き方の実現、③勤務間のインターバル制度の普及促進がありますが、規制の中心は長時間労働抑制の点にあります。
長時間労働抑制のための制度として、①三六協定特別条項で設定すべき延長可能時間、②三六協定の締結についての留意点、③時間外労働の管理の方法、④年次有給休暇取得促進への対応、⑤限度時間を超えて労働した場合に生ずる健康確保措置が設けられました。
一つ目の三六協定の特別条項において設定すべき延長時間の制限ですが、法律の規定では延長時間の制限はこれまでありませんでした。しかし、今回の法改正によって、限度時間が法律で明文化され、その結果罰則が適用されることになりました。罰則規定ですが、労働基準法519条の15によって、労働基準法36条の6項違反の場合が明記されており、具体的には4ヶ月以内の懲役又は30万円以下の罰金という刑罰になっています。
例外として特別条項で定めることができる範囲として、労働基準法36条5項にて、月45時間を超える時間外労働が出来る月は年に6回と定められました。また、時間外及び休日労働を合わせた時間は、単月で100時間未満でなければならない、時間外と休日労働合わせた時間は、2ヶ月〜6ヶ月平均で80時間以内でなければいけない、時間外労働は年間720時間以内でなければならないと規定されました。
大事なポイントは、単月100時間未満、2ヶ月から6ヶ月の平均80時間以内という制限は、時間外休日労働の両方を足した時間数についての規定であるが、年間720時間以内という制限は、時間外労働だけの規定であり休日労働は含まれないということです。
企業としては上記規律に違反しないように労働時間の管理をすべきですが、それぞれの規律の基準が単月100時間と平均80時間は休日労働も入ってるけれども、年間720時間というのは休日が入っていないという労働時間の管理では現場が混乱しやすいので、現場が混乱しない分かりやすい基準をですね示した方がよいでしょう。
働き方改革法案概要
2019/06/12 08:48|カテゴリー:働き方改革
働き方改革法案は2019年4月1日に施行されました。
働き方改革法案の内容はまとめると4点あります。
①長時間労働の是正、②多様で柔軟な働き方の実現、③勤務間のインターバル制度の普及促進、④雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金、均等待遇と均衡待遇)
最初の3点は、簡単に言うと長時間労働を抑制しよう、柔軟な働き方を実現しようという内容となります。これに対して4つ目の公正な待遇という点は長時間労働とは直接関係がありません。したがって、今回の働き方改革法案は、長時間労働抑制と公正な待遇の実現という二つの柱があると言えます。
また、働き方改革法案は、長時間労働を止めて労働生産性を高め、その高まった労働生産性によって社会経済を発展させるという意図があります。
働き方改革法案として雇用対策法も改正されていますが、第1条の目的が変更され、「労働者の多様な事情に応じた安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように・・・」といった内容があります。つまり注目すべきは、労働生産性の向上を促進して労働者がその有する能力を有効に発揮できるようにするという目的で、法が改正されていいます。
また、第3条の基本的理念も改正されており、3条2項は「労働者は職務の職務の内容及び職務に必要な能力経験その他の職務遂行上必要な事項の内容が明らかにされ並びにこれらに即した評価方法により能力等を公正に評価され当該評価に基づく処分を受けること・・・」といった内容があります。つまり労働者はその仕事の中身を明確にされ、その明確にされた仕事の結果について適正に評価され、その評価に基づいて処分を受けるべきとされています。
このように雇用対策法の1条の目的及び3条の基本理念の改正によっても分かるように、今回の働き方改革法案というのが長時間労働を抑制するだけではなく、労働生産性高め、高まった労働生産性に見合った公正な評価を行い、これによって社会経済を発展させることが法の趣旨であると言えます。
したがって、働き方改革法案を理解するためには、上記の法改正の趣旨を理解することが必要となるでしょう。
外国人就労をさせる経営者が知っておくべき基本ルール・考え方
2019/05/06 09:03|カテゴリー:外国人労務問題
外国人雇用を考える経営者は、まず「在留資格」について理解しなければなりません。
外国人の方は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます)で定められている「在留資格」の範囲内において、我が国での就労活動が認められています。「在留資格」とは外国人が日本で滞在するための法的な地位を指し、日本への滞在目的により様々な種類があります。在留資格ごとに日本に在留中の活動範囲が定められており、外国人が就労するためには「就労が許可されている」在留資格をもっていなければなりません。いわゆるビザが必要となるのです。
そのため、外国人を雇用する際には、日本に中長期間滞在する外国人に交付される在留カードを見て確認する必要があります。
第1 在留資格を適切に理解していないと・・・
在留資格を持たない外国人を就労させたり、在留資格に定められた範囲以上の活動をさせたり、在留期間を超過している外国人を就労させたりしていると、「不法就労助長罪」として刑事罰に問われることになるので注意が必要です。
1、不法就労助長罪とは・・・
入管法73条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
不法就労助長罪でいうところの不法就労とは、密入国者・不法残留者等の在留資格を持たない外国人を雇用することだけでなく、留学生等在留資格はあるが働く許可を受けていない者を雇用したり、資格外活動許可はあるが、許可されている時間以上勤務させたり、許可されている業務以外の業務をすることを含みますので注意が必要です。
2、ハローワークへの届出
また、外国人の雇用または離職についてハローワークに届出をせず、または虚偽の届け出を行った事業主は、30万円以下の罰金 に処せられます(雇用対策法28条、40条第2項)。
3、事業主は不法就労だと「知らなかった」としても処罰される可能性
不法就労助長罪は、不法就労の外国人を雇用することで成立しますので、雇用した外国人が不法就労にあたることを、「知らなかった。本人に口頭で確認したら、違うと言われた。」という理由は認められません。在留カードを確認していないなどの過失がある場合には、処罰を免れることはできない厳しい法律なので、企業は外国人を採用する際は、必ずパスポートおよび在留カードの「在留資格」「在留期限」を確認して、コピーなど在留カードの写しをとっておきましょう。
また、すでに雇用している外国人従業員の在留資格の期限など、本人だけに任せるのではなく、企業側もチェックできる体制を構築しておくべきです。在留資格は専門性が高く、期限や内容など、本人もよくわかっていない場合があります。一度就労の許可が下りれば、永続的に就労できると勘違いして、更新が必要であることを知らない場合も多々あります。在留期限を過ぎていた場合も不法就労となりますのでご注意ください。
第2 文化の違いを理解しないと・・・
外国人を雇用する際には、従業員としての日本人と外国人の違いを知る必要があります。違う国で育った外国人は当然、「文化」が違います。この文化を理解せずに外国人に接していると、思わぬところで、ハラスメントや差別につながることもあります。
外国人との文化的違いの代表例
信仰する宗教の有無、宗教的慣習
コミュニケーション方法・表現方法
商習慣 等々
外国人の雇用を正しく、効果的に、リスク無い形で実現し、ビジネスを加速させるためにも、外国人が働きやすい職場環境を整備することが必要です。
【参考文献】
外国人の雇用に関するトラブル予防Q&A
外国人雇用の実務 第2版