弁護士法人 Si-Law

西田ブログ

事業承継とは

中小企業の後継者不在が深刻な中、なぜ事業承継が欠かせないのでしょうか。

本稿では、その理由や事業承継の基本的な方法、流れ、成功のポイントなどを解説します。

 

  •  1. 事業承継とは

事業承継とは、企業の経営者が別の人に引き継ぐこと。

これは、技術を次の世代に伝えたり、従業員の雇用を守ったり、地域の経済を支えるために行われます。最近では、個人や個人事業主による引継ぎも増えています。

事業承継と事業継承は似ていますが、一般的には「事業承継」と呼ばれます。

(中小企業庁では「事業承継」が一般的です)

日本の地域経済では経営者の高齢化が進んでおり、事業承継は非常に重要な課題となっています。

 【中小企業における事業承継の現状と課題】

高齢の経営者が増えていて、2025年までに70歳以上の経営者が245万人に。

そのうち約127万人が後継者がいないとも言われています。

これは日本が直面する、大きな問題で、技術やノウハウが失われる可能性が高まり、取引先や従業員、地域にも影響が出てしまうことに。

事業承継は計画的な準備がとっても大事。

でも、多くの事業承継問題は水面下に隠れているのが現状です。

  • 2.  事業承継で引き継ぐ3つの要素

事業承継は単なる経営者の交代ではなく、経験や人間関係、資産、知的資産の引継ぎが大切です。

  • 経験や人間関係(人)
  • 資産や財務状態(資産)
  • ノウハウやブランド価値(知的資産)

これらをしっかりと引き継ぐことが成功のポイント。

【人】

経営権:次のリーダーにバトンを託します。
後継者の選定と育成:師弟のような関係で経験と技術を継承します。
後継者との対話:組織全体の調和と向上を目指す目指す話し合い。

【資産】

株式:会社の所有権のこと。株主は会社のオーナーで、成功時に利益を分ける権利があります。
資金:日々の経営や成長に必要なお金のこと。運転資金、借入金も含まれます。
事業用資産:機械や設備、不動産など、直接事業に必要な物理的資産のこと。

【知的資産】

知的資産とは、会社が持つ目に見えないけれど大切な価値のこと。

  • 経営理念:会社の方向を示すもの
  • 経営者の信用:信頼の土台
  • 従業員のスキルとノウハウ:強み
  • 取引先との関係:成長が広がる可能性
  • 顧客情報:市場理解のカギ
  • 特許と許認可:アイデアと運営を保護する盾

これら一つひとつが、会社を支え成長させる重要な要素です。

  • 3. 事業承継の主な方法・種類

親族外承継やM&Aによる事業承継が増え、企業はより多くの選択肢と成長機会を持つようになりました。

【親族内承継】

親族内承継は、親から子や親戚に経営を引き継ぐ方法。
家族の考え方や経営の方針が伝わりやすいことがいいところです。

でも、最近では「後継者がいない」という会社も増えてきました。
会社の成功と継続のために、後継者育成や親族外承継やM&Aなど、新しい方法を考え、選択肢を広げることが大切です。

メリット

  • 従業員や取引先から受け入れられやすい
  • 後継者教育など十分な準備期間を確保できる
  • 相続や贈与により容易かつコストを抑えて事業承継できる

デメリット

  • 後継者に適した親族がいるとは限らない
  • 後継者の決定や経営権の集中が難しい場合がある
  • 親族間で相続トラブルが起きる可能性がある

【親族外承継】

親族外承継とは、家族以外の人が経営を引き継ぐ方法。
役員、優秀な若手経営陣、工場長などの候補者が新しい視点や経験を持ってきて、会社を良くしてくれることがあり、長く続けていくための戦略の一つです。

メリット

  • 経営や実務をよく知る内部の人に承継できる
  • 経営者としての資質・適性の見極めができる
  • 経営方針や人事制度などの一貫性が期待できる

デメリット

  • 社内に適任者がいないおそれがある
  • 後継者に株式取得のため資力が無い場合が多い
  • 個人債務保証の引き継ぎが問題となる場合が多い

【 第三者承継(M&A)】

M&Aは会社同士が手を組んで、もっと大きくて強い会社を作る方法。

(例)食品会社が別の食品会社を買収して新しい商品を開発すること。
(例)自動車メーカーが部品メーカーを買収して製品の品質を向上させること。
などがあります。

M&Aはさまざまな業界で行われ、ビジネスを成長を加速させる戦略的な選択肢です。
(M&Aは「Merger and Acquisition」の略で、日本語で「合併と買収」を意味します)

メリット

  • 後継者を広く外部に求められる
  • 現経営者が会社の売却利益を得られる
  • 従業員の雇用や取引との取引関係を維持できる

デメリット

  • 希望の条件を満たす売却先を見つけられるとは限らない
  • 文化やシステムの統合に時間がかかる
  • 4 事業承継を実行する流れ

事業承継は、経営の現状を把握し、将来のリーダーに引き継ぐ計画を立て、最終的には新しいリーダーに会社の運営を渡す一連の手順です。

【経営状況や課題の把握】

まずは自社の経営状況や事業承継を行うにあたっての課題を把握する

【経営状況の把握】

まずは自分の会社の状態を知りましょう。
会社の株の価値を知り、収益性の高い商品やサービスを見つけ、他社との違いを考えます。
自分の会社が今どんな状態なのかを知ることで、改善すべき点と進むべき道がわかります。

【事業承継における課題の把握】

まず、後継者の適性を確認し、能力や意欲を見極めます。
家族や取引先とのコミュニケーションも重要で、トラブルに備えた対策を考えます。

これらを順番にしっかり考えることで、会社の引継ぎがスムーズに進みます。

事業承継計画の策定・M&Aのマッチング

【親族内・親族外承継の場合】

「いつ、誰に、何を、どうやって継ぐか」を計画しましょう。

「いつ」継ぐか:経営者の引退の時期を決めます。
「誰に」継ぐか:後継者を決定します。
「何を」継ぐか:どの部分を引き継ぐのかを決めます。
「どうやって」継ぐか:具体的な手順とスキル・ノウハウの継承方法を後継者と話し合います。

【第三者承継(M&A)の場合】

適切な買い手を見つけることが大切です。相性が合うかどうか考えましょう。

専門家のサポート:M&A(合併と買収)は、法律や契約交渉など専門的な知識が必要になります。

専門家は、取引に関する知識を持っており、価格や条件の交渉、法的なルール、税金対策など、取引を成功させるためにサポートしてくれます。
安心してビジネスを進めるために欠かせない存在です。

希望条件を明確にする:希望する条件や目標をしっかりと固めておくことで、計画を立てやすくなります。

経営改善

経営改善は会社をもっと良くすること。

  • 会社のお金の使い方を見直し、コストを減らし、利益が増えるようにする
  • 商品やサービスをもっと良くして、たくさんの人に買ってもらえるようにする
  • みんながより賢く働けるように、勉強やスキルを高める環境を整える
  • 社内のルールを見直して、無駄を減らし、運営を効率化します。

 

事業承継・M&Aの実行

事業承継やM&Aは、会社が新しい持ち主に変わったり、他の会社と一緒になったりすること。
それぞれのステップを簡単に説明します。

【名義変更】

会社を次の人に渡すとき、会社の株式や資産を引き継ぐ人の名前に変えること。
その人が新しい持ち主になります。

【資産移転と経営権譲渡】

会社の持ち物やお金、そして会社をどうやって動かすかの権利を、新しい持ち主に渡すこと。
新しい持ち主が会社を動かすことができるようになります。

【M&Aのクロージング】

M&Aとは、会社同士が一緒になること。
その最後のステップで、お金のやり取りや約束事を決めて、全部の手続きを終わるのです。

【PMI(統合)】

M&Aで会社が一緒になった後、二つの会社をうまく一つにまとめて、新しい会社のやり方を決めること。
新しい会社がスムーズに動き出せるようにします。

成功のポイントは、信頼関係と協力です。
お互いによく話をして、同じ目標を持つことが大切です。
しっかり計画を立て、難しいことは、専門家に聞いて、スムーズに進められるようにしましょう。

5 事業承継にかかる税金

事業承継では、いくつかの税金がかかります。

【相続税】

家族の人が亡くなったときに、その人の持っていたお金や家などを引き継ぐときにかかる税金。
もらった財産がたくさんある場合、その分たくさん税金を払います。

【贈与税】

生きているうちに、家族からお金や物をもらったときにかかる税金。
でも、一定の金額内の場合、税金はかかりません。

親族外承継・第三者承継(M&A)でかかる税金

【法人が株を売る場合】

会社が持っている株を売ると、その利益に税金がかかること。
これを法人税と言います。

【個人が株を売る場合】

個人が持っている株を売ると、その利益にも税金がかかること。
これを所得税と言います。(住んでいる地域によっては、住民税も払います。)

株をたくさん売って、たくさんのお金をもらうと、その分税金もたくさん払うことになります。
税金について、大切なのは事前の計画です。

正確な計算は複雑なので、節税対策を考えるときは専門家へ相談しましょう。

【事業譲渡の場合】

事業譲渡は、自分のやっているビジネスを他の人に売ること。
いくつかの税金がかかります。

【会社が事業を売る場合】

会社が自分の事業を売ったとき、そのお金から事業を始めるために使ったお金を引いた残りのお金に、法人税がかかります。

【個人が事業を売る場合】

自分で事業やっている人が売ると、そのお金に対して所得税がかかります。

【消費税の対象の場合】

売る事業が商品やサービスが消費税の対象になるときは、その売り上げにも消費税がかかります。(お店で買い物をしたときに払う消費税と同じです)

事業をたくさん売ってたくさんお金をもらうと、もらったお金が多い分、その分税金もたくさん払うことになります。

税金について、大切なのは事前の計画です。

正確な計算は複雑なので、節税対策を考えるときは専門家へ相談しましょう。

事業承継で失敗しないためのポイントは?

【 早めに準備を始める】

事業承継は時間がかかるから、早めに準備を始めることが大切です。

経営者が60歳迎える前後には、誰にどうやっていつ渡すか考え始めるといいです。

【資金を集めておく】

借入しないで済むように、事前にお金をためておくことが重要です。

【補助金や融資を利用する】

政府や地域の支援を使うと、後継者がお金を払う負担を少なくするために役立ちます。

【事業承継・引継ぎ補助金】

次の人に会社を渡すときに、政府が費用の一部を出してくれる制度。
(どんな支援を受けられるかは住んでいる場所によって異なります。)

日本政策金融公庫の融資・信用保証

日本政策金融公庫が事業承継のためにお金を貸してくれたり、お金を借りるときの保証をしてくれたりする制度。(必要なお金を比較的簡単に集めることができます。)

成功のためにぜひ、活用しましょう。

 税金対策をしておく

事業を受け継ぐときは、たくさん税金がかかる可能性があり、対策をしなかった場合、後継者が納税に困り、経営にも影響が及ぶ可能性があります。
後継者に優遇される税制を、きちんと利用することで税金減らすことができるのです。

【事業承継税制】

事業を受け継ぐ際にかかる税金を減らす仕組みのこと。
親から子供に会社を譲る場合、相続税や贈与税がかかりますが、この税制を活用するとその税金を軽減できます。

【経営資源集約化税制】

土地や株式などの経営に関わるものをまとめて、税金を減らす仕組みのこと。
例えば、会社が複数の土地を所有しており、一つにまとめるときに、通常は高額な税金がかかります。しかし、この税制を活用すると税金を軽減することができます。

税金対策を考えることは、安定した経営の実現ためには欠かせないのです。

相続トラブルのリスクに備えておく

【家族で話し合う】

まずは家族みんなで、将来の会社のことについて話し合いましょう。
誰にいつどのように会社を引き継ぐか、みんなの意見を聞いて、みんなが納得する方法を考えよう。

【遺言書を作る】

遺言書は、自分の持っているものを誰にどう渡したいか、人生の最後に残す大事な手紙みたいなもの。
しっかりと書いておけば、自分の希望通りに会社や財産が分けることができます。

日本の遺言率はまだまだ低いですが、遺言書がないと財産の分け方でケンカが起こることも多くなります。
家族で話し合い、必要なら遺言書を作ることで、トラブルを予防できるのです。

 

専門家のサポートを受ける

 

【専門家ができること】

  • 大事な契約書をちゃんと作ること
  • 会社のがルールや法律を守っているかチェックすること
  • 会社をスムーズに新しい人に渡すためのアドバイスをくれること
  • もし問題が起きたら、うまく話し合ったり、裁判で争う準備をすること

会社を次の人に繋ぐとき、その会社を大切にしてきた社長さんは、そのことだけをしっかり考えられるようにお金の事や法律の事などは、税理士や弁護士のような、特定の分野に詳しい人達の力を借りると安心です。

 

「この街の事業承継」は事業承継を考える経営者のお悩みに寄り添いながらサポートいたします。

 

事業承継は、考えただけで少し難しそう、と感じられるかもしれません。

「後継者が見つからない・・」

もしかしたら「うちの会社、今赤字だし・・」と会社の現状に不安があったり
事業承継のことを調べても「どう進めたらいいのかわからない・・」
と...悩みがあるかもしれません。

でも、大丈夫ですよ。
一つ一つ答えを見つけていけるはずです。

後継者が見えなくても、現在の会社の状況が厳しくても、しっかりと準備すれば、不安もきっと解消できます。

私が弁護士としてできることは、疑問や悩みを大切に扱い、共に解決の道を探ることです。
お話しいただく内容は、全て秘密厳守ですので安心してください。

九州に特化し、つなぐお手伝いをしております。
弁護士の西田幸広です。

リードマネジメント

自分の行動管理ならできるが、部下の行動管理は難しい・・・

部下のマネジメントに頭を悩ませている経営者・幹部は非常に多いと思います。マネジメントとは、人を介して仕事をする技術であり、リードマネジメントとは、選択理論という心理学を職場におけるマネジメントに応用した手法です。この対極にボスマネジメントがあり、ボスマネジメントの上司は、結果に焦点を当てて、責めたり脅したりすることによって改善を図ろうします。

一方、リードマネジメントの上司は、プロセスに焦点をあて、事実を直視させますが、メンバーの成長を常に念頭に置き、決して攻撃的な言葉使いはしません。

 

リードマネジメントには8つの要素があります。

1.       良好な人間関係をつくる

上司と部下との間に良い人間関係がなければ、いかなる指導も援助の申出もアドバイスも、「あなたに言われたくない」と思われてしまい、徒労に終わります。

2.       現在の事実を話し合う

過去の出来事や問題に焦点を当てても生産的ではありません。また、感情に焦点をあてると、攻撃的な口調になったり誰かを批判したりするだけで、次の評価の話に繋がりません。

3.       部下に自分の仕事を評価してもらう質問をする

ここでのポイントは、①問い詰めるような言い方にならないよう穏やかに聞くこと、②行為に焦点を当てて尋ねることです。

4.       改善計画を部下と一緒に立てる

仕事の改善に向けて行動を変えることで、結果が上向くという直接的な効果はもちろん、部下の仕事に対する満足感も得られるという効果があります。

5.       しっかりした実行の決意を取り付ける

実行に対する決意は、上司と部下との約束なので、それが果たされたとき互いの人間関係はより強固になります。

6.       言い訳の機会を作らず、仕事の話を進める

立てた計画は必ずしもうまくいくとは限らず、その際は再度計画を立て直す必要があります。この時のポイントは、うまくいかなかった理由は問題にせず、「何を」「いつ」するかという「この後どうすべきか」という質問をすることです。

7.       罰したり批判したりせず、責任を自覚させる

仕事がうまくいかなかったという結果を経験させ、部下が責任感を持つように指導しなければ、単に甘いだけのマネジメントになってしまいます。

8.       簡単に部下のことをあきらめない

部下はあきらめられたと感じて気に掛けられなくと、組織に対する所属意識や貢献意識が薄れてしまい、「上司が何もしてくれないから」という言い訳も認めることになります。

 

自社で行われているマネジメントはどうでしょうか?ボスマネジメントになっていませんか?甘いだけのマネジメントになっていませんか?会社が飛躍するためには、上質の効果的なマネジメントは必要不可欠だと思うのです。

 

会社の出口戦略(M&A)

「会社の出口戦略」の手法は下記の5つしかありません。

①  株式上場  ②事業承継  ③M&A ④清算・廃業  ⑤倒産

 

今回は「会社の出口戦略」のうち,M&Aについてお話ししたいと思います。

М&Aは、自社を他の会社に譲ることです。現在は事業承継の手法として増えてきている手法であり、下手に事業承継をしたくない息子や娘に無理やり継がせるよりも、経済的基盤もしっかりしている会社に売った方が、現経営者や社員にとっても幸せな一面もあると言えます。

以下に、当事者毎のM&Aのメリット・デメリットについて挙げてみました。

 

経営者

メリット

l  上場企業など大手企業に買収された後も、リストラされず継続的に経営者として経営できた場合は、資金力があるため事業が進めやすくなる

l  個人保証や担保を外せる可能性がある

l  後継者候補者も多くなり、廃業することなく会社を存続させることができる

デメリット

l  買収した会社から経営者が派遣されることも多く、社長交代させられる

l  買収した会社との異なる企業風土を融合させるのに時間と労力がかかる

 

取引先

メリット

l  上場企業など大手企業に買収された場合、会社の与信が良くなる

l  取引規模が拡大する可能性がある

デメリット

l  買収した会社の方針によっては、取引の見直しが行われる可能性がある

l  買収した会社の与信が良くないと、取引に支障をきたす恐れがある

 

金融機関

メリット

l  上場企業など大手企業に買収された場合、会社の与信が良くなる

l  取引規模が拡大する可能性がある

l  多様なビジネス提案ができるようになる可能性がある

デメリット

l  買収した会社の方針によっては、取引の見直しが行われる可能性がある

l  メインバンクとしての地位を失うことがある

 

М&Aも,あくまでも「会社の出口戦略」の1つでしかありません。何が経営者にとって,周囲の人たちにとって,地域にとってベストな方法かは,会社の置かれている状況によって全く違いますので,経営者が考え抜く必要があると思うのです。

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