事業承継~融資~
2024/08/25 21:04|カテゴリー:事業承継
事業を次の世代に引き継ぐ際、大きなお金が必要になることがあります。
そんなときに役立つのが、銀行や日本政策金融公庫が提供している「事業承継ローン」という制度です。
このローンを活用することで、事業承継のための資金調達が可能になります。
本稿では、この制度を利用する際のメリットとデメリット、申し込みの流れなど、これから事業承継を考える方々に向けわかりやすく解説していきます。
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事業承継ローンとは?
事業承継ローンとは、事業を次の人へスムーズに引き継ぐために必要な資金を借りるための特別な支援制度です。
私たちの身近な銀行や国が支援する金融機関から提供されています。
借りることができる金額は、数百万円から場合によっては数千万円にも上り、事業を引き継ぐ際のさまざまな費用に充てることができます。
しかし、多くの中小企業では、将来に備えて十分な資金を準備しているわけではありません。
事業承継のタイミングで資金不足に直面しないように、事前に計画を立て、事業承継ローンを上手に活用することが大切です。
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事業承継をするメリット・デメリット
事業承継ローンを活用するメリット・デメリットは、以下の通りです。
[メリット]
・初期投資
スムーズな資金調達が実現でき、少ない自己資金で事業承継が可能になり、経済的負担を軽減しながら、スムーズに事業を引き継ぐことができる
・財務の柔軟性
企業の財務状況を柔軟に保ち、手元に現金を保持することを可能にする
・事業継続の安定性
株式の所有比率を安定させ、将来的に他の資金調達をしやすくなるため事業の継続性と安定性が向上する
・様々な用途
借りた資金は、新しい機器の購入や新規事業の立ち上げなど、幅広い用途に活用できる
・税制のメリット
一部の事業承継ローンでは、税制面で優遇措置があり、税負担を軽減できるため経済的負担が減る
・後継者育成の機会
事業承継を行う過程で、後継者に事業運営のノウハウを伝承する機会にもなる
[デメリット]
・個人保証のリスク
場合によっては、事業主の家や車などの私物を保証として提供する必要があり、リスクが伴う
・余分な出費が発生
借りたお金に対して利息や手数料など追加費用が発生する
・審査の難しさ
ローンを申し込む際、事業の健全性や将来性、事業主の信用度などを審査するため、必ずしもローンが承認されるとは限らない
・手続きの煩雑さ
ローンの申請から実際にお金を手にするまで、多くの書類の準備や手続きが必要で、時間がかかるため計画が必要である
・返済の負担
借りたお金はいずれ返さなければならず、定期的な返済は事業のキャッシュフローに負担をかけることがある
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事業承継で融資が必要となる理由
事業承継の際に必要となる融資には、具体的に以下のような理由があります。
ここでは、これらの理由3つを分かりやすく解説します。
・株式や資産の購入
事業承継では、後継者が会社の株式や事業に必要な資産を購入することが一般的です。
これには大きな資金が必要となり、事業承継ローンを活用してこれらを購入することが可能になります。
例えば、製造業を営む会社であれば、製品を作るための工場や機械が必要です。
これらを購入するためには、通常、大きな一時的な出費が必要となります。
大きな設備や不動産など、高価な資産の取得では、事業承継ローンが役立ちます。
・税金の納付
事業承継に伴い、相続税や贈与税が発生することがあります。
これらの税金は、事業規模や承継の方法によって額が大きくなることがあり、適切な資金計画が必要です。
事業承継ローンを活用することで、これらの税金を期限内に支払い、事業の安定を保つことができます。
・事業運営資金
事業承継後は、新たな経営体制の下での事業の運営が始まり、日々の運営や将来の展開に向けた資金が必要です。
これには、従業員の給料、材料の購入費、新しい事業の開始費用などが含まれます。
事業承継直後は、これらの資金を確保するための準備期間が限られているため、事業承継ローンが役立ちます。
資金繰りに余裕を持ち、事業のスムーズな運営と成長をサポートすることができます。
資金計画をしっかりと立て、必要なお金を確保することが、事業の持続的な成長や発展につながります。
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事業承継ローンの種類
事業承継で受けられる融資には、主に以下2つの制度があります。
・日本政策金融公庫による融資制度
・銀行など民間金融機関による融資制度
これらの制度は、事業承継を支援するために提供されています。
それぞれの特徴については以下の通りです。
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日本政策金融公庫による融資制度
日本政策金融公庫が提供する「事業承継・集約・活性化支援資金」は、中小企業や個人事業主を対象とした支援策です。
政府が支援しているため、市場のローンよりも低い利率で資金を借りることができます。
これは、新たに事業を継ぐ人が、比較的簡単に必要な資金を手に入れられるよう支援しています。
ただし、支援を受けるためには、事業の将来性や現在の経営状態の健全さ、具体的な事業計画の提出など、一定の条件を満たす必要があります。
[利用対象]
1.中期的な事業承継を計画し、経営権を確保したい方
・事業承継計画の策定が必要な方
・経営権の円滑な移行を望む方
2.事業の承継や集約に関連する法律に基づいて認定を受けた中小企業者
・経営承継円滑化法に基づく認定を受けた方
3.経営者個人保証免除を申し入れ、資金調達が難しい方
・個人保証の免除を申し入れた方で、資金調達に課題がある方
4.事業の承継・集約を契機に新たな取り組みを図りたい方
・第二創業や新規事業への展開を考えている方
[資金使途]
事業承継等に必要となる設備資金および運転資金
[融資限度額]
別枠7,200万円(うち運転資金、4,800万円)
[返済期間]
設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内)
[利率]
原則 基準金利
ただし、一定の条件に該当する場合には特別金を適用
[担保・保証人等]
担保設定の有無、担保の種類などについては要相談
ただし、無担保無保証を希望する場合には、以下の制度を併用できる
・税務申告を2期終えていない方 ・・・新創業融資制度
・政務申告を2期以上終えている方・・・担保を不要とする融資制度、経営者保証免除特例制度
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銀行など民間金融機関による融資制度
銀行や信用金庫などの民間金融機関も、事業承継に特化したローンを提供しています。
これらのローンは、事業を引き継ぐ後継者が資金を確保するためのものです。
金融機関によって条件は異なりますが、一般的には担保や保証人が不要な場合もあり、比較的審査が通りやすく設定されていることが多く、最大で5000万円までの借り入れが可能で、返済期間は最大10年とされています。
5年や10年の据え置き期間が設けられていることも多く、借りた資金で事業を安定させた後、余裕を持って返済計画を立てることができます。
これらの支援を活用することで、事業承継の時に必要なお金を手に入れやすくなります。
例えば、新しい事業のアイデアを実現したり、会社を大きく成長させるためのお金を用意することができます。
また、返済についても無理なく計画を立てられるため、事業運営に集中できます。
さらに、経営のノウハウや事業を効率的に行うためのアドバイスを得ることも可能であり、事業を安定させ、長期的に成長させるために大切な支援となります。
大切なのは、事業にぴったり合った支援を選び、そこから提供される資金を効果的に活用することです。
これにより、事業承継を成功に導き、会社を長く続けるための強い基盤を築くことができます。
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事業承継で融資を受ける際の流れ
日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用する場合の基本的な流れは以下の通りです。
① 事業承継計画の策定
まずは、自分の事業をどう継承していくか、しっかりとした計画をたてます。
この計画には、高継者の教育や新しい体制の準備、相続税や贈与税に関する税対策など、事業承継に関わるさまざまな内容が含まれます。
計画書には、目標、戦略、行動計画を具体的に記述し、事業の現在の財務状況と将来の財務予測も記載します。
計画をしっかりとたてることで、何をすべきかが明確になり、大切なポイントを把握しやすくなります。
② 支店窓口で相談
計画書が完成したら、日本政策金融公庫の支店に行き、担当者に相談します。
このとき、会社の財務状況を示す決算書、会社案内など、具体的な資料を持参すると、承継計画をより詳しく説明することができます。
相談を通じて、資金の具体的な要件や条件を把握することができ、事業承継に向けての準備が整います。
③ 融資の申請
窓口での相談後、具体的なローン申請に移ります。
事業計画書、財務諸表、税務申告書、身分証明書など、さまざまな書類が必要になる場合があります。
必要書類を正確かつ詳細に準備し、手続きを進めます。
④ 審査
申請書類提出後、金融公庫による審査が行われます。
審査では、提出された書類の内容確認のほか、場合によっては現地調査や追加質問が行われることもあります。
担当者が事業場所を訪問したり、事業の実態や運営状況を直接事業者に直接質問するなど、申請内容の信頼性を評価します。
そのため、事業や計画の内容を十分に理解し、説明できるようにしておくことが大切です。
自分の事業について詳しく説明することで、融資の審査がスムーズに進む可能性が高まります。
⑤ 融資決定・貸付契約
審査を通過すると、事業承継ローン貸付契約の手続きに入ります。
具体的な貸付条件が決まり、契約書が作成されます。
ローン額、利率、返済期間、返済スケジュールなどが明確になります。
契約内容をしっかり理解し、同意の上で署名します。
その後、約束された資金が提供され、事業承継資金として活用できます。
⑥ 返済開始
ローンを受けた後は、約束された計画に従って返済を開始します。
通常、指定された銀行口座から自動引き落としで行われます。
返済は一般的に、金融公庫との契約に基づいて設定されたスケジュールに従って行われます。
返済計画は事前にしっかりと立てておき、無理のない範囲で計画的に返済を進めることが重要です。
以上の流れに沿って、日本政策金融公庫からの事業承継ローンの利用が進められます。
一つひとつ丁寧に進めることで、事業承継に必要な資金を確保し、スムーズな事業承継を実現することができます。
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事業承継の融資に関するその他の支援制度
審査に通らない場合、融資を受けることができないことがあります。
審査では、事業の信用や返済能力などが評価されます。
万が一審査に通らない場合でも、諦めずに他の方法を探すことが大切です。
融資以外にも、事業承継の資金調達方法はいくつかあります。
その他の支援制度は以下の通りです。
・経営承継円滑化法における信用保証
この制度は、中小企業の銀行融資を利用しやすくするため、信用保証協会が融資額の一部を保証します。
つまり、後継者がもし返済できなくなった場合でも、信用保証協会がそのお金を代わりに支払います。
銀行はリスクを少なくして融資を行うことができ、特に資金が少ない後継者でも融資を受けやすくなります。
・利用方法
最寄りの信用保証協会に相談して、事業承継計画や財務情報などを提出して申請を行います。
普通保険 [通常枠] 2億円 [別枠] +2億円
無担保保険 [通常枠] 8000万円 [別枠] +8000万円
特別小口保険 [通常枠] 2000万円 [別枠] +2000万円
(参考 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu/kinyushien_pamphlet.pdf)
・事業承継特別保証制度
この特別保証制度は、特に事業承継を目的として設けられており、信用保証協会が融資額のほとんどを保証します。
これにより、後継者が自己資金が少ない場合でも、必要な資金を簡単に確保しやすくなります。
大きな保証があるため、銀行はより安心して融資を行うことができ、後継者は必要な資金を確保しやすくなります。
また、利息が低い場合や返済期間が長く設けられることなど融資条件が改善されます。
・利用方法
最寄りの信用保証協会に相談し、事業承継計画や財務情報などをもとに申請を行います。
[利用対象]
次の1又は2に該当し、かつ3に該当する中小企業者
1.保証申し込み受付日から3年以内に事業承継を予定する事業承継計画を有する法人
2.令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人であって、事業承継日から3年を経過していないもの
3.次の(1)から(4)までに定めるすべての要件を満たすこと
(1)資産超過であること
(2)EBITDA有利子負債倍率※が10倍以内であること
※EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社責-現預金)÷(営業利益+減価売却費)
(3)法人・個人の分離がなされていること
(4)返済緩和している借入金がないこと
[資金用途]
事業資金
既存のプロパー借入金(個人保証有)の本制度により借り換えも可
[保証限度額]
2億8,000万円
(参考 https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/shokei/)
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事業承継・引継ぎ補助金
国や地方自治体が提供する補助金で、事業承継にかかる費用の一部を補助します。
例えば、後継者の育成の研修費用や、事業承継に伴う法務・財務の相談、事業承継計画作成のための専門家への相談費用などが対象になることがあります。
補助金は返済の必要がないため、資金の負担を軽減しながら事業承継を進めることができます。
・利用方法
補助金の公募情報をチェックし、申請書類を準備します。
事業承継計画を含め、補助金の要件に合致する内容を明確に記載し、指定された期間内に提出します。
申請方法についてわからないことは、事前に問い合わせるか、専門家を活用します。
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事業相続税制
事業承継に伴う相続税や贈与税の負担を軽減するための税制優遇措置です。
国の承認を受けることで、税金の負担の軽減することが可能になります。
・利用方法
専門家の協力を得て、承認を受けられる事業承継計画を作成し、国税局に提出し承認を受けます。
これらの制度を活用する際は、しっかりとした計画と準備が必要不可欠です。
各制度の詳細は、関連機関への問い合わせや、法務・税務の専門家との相談を通じて、最適な支援を受けましょう。
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事業承継に必要な資金や融資については、お気軽に「この街の事業承継」までご相談下さい。
資金調達の選択は、事業の未来を大きく左右します。
さまざま融資制度がありますが、それぞれに返済義務が伴います。
重要なのは、各制度の特徴をきちんと理解し、条件や返済義務に注意深く目を向け自分の事業にとって最適な方法を慎重に選ぶことです。
法務・税務の専門家としてわかりやすくお伝えします。
熊本で25年、弁護士の西田幸広です。