人間尊重の道場
2020/04/22 09:08|カテゴリー:経営
小説「海賊と呼ばれた男」のモデルとなっている出光興産の創業者「出光佐三」は、新入社員入社式でこのような言葉を残しています。
「出光は事業会社でありますが、組織や規則等に制約されて、人が働かされているたぐいの大会社とは違っているのであります。出光は創業以来『人間尊重』を社是として、お互いが錬磨して来た道場であります。諸君はこの人間尊重という一つの道場に入ったのであります。」
出光佐三が説くところは、いつも形而上的な観念論で、金を儲けるための商売のコツなどの実利的な側面は全くなかったそうです。にもかかわらず、事業経営の上でも稀に見る大きな成功を収めています。その秘密は、「会社は人間尊重の道場である」などの出光佐三の言葉一つ一つに隠されていると思うのです。
のちに出光興産の相談役になった石田正貫は、出光佐三との思い出を以下のように語ったそうです。
「この人は、私とは40年を超える長い付き合いであった。にもかかわらず、私にはただの一度も『金を儲けよ』とは言われなかった。」
出光佐三は、「金を儲けよ」とは言わずに「人間を尊重せよ」「人を愛せよ」と言いました。そのような考えを表す言葉としてこのような言葉を残しています。
「人を育てる根本は愛である。愛とはいかなる場合にも、自分を無私にして、相手の立場を考えるということである。われわれ出光はこの愛を口先だけでなく、ひたすら不言実行してきたがために、今日の人を中心とした出光の形が出来上がった。」
出光佐三は、「入社した社員は子供が生まれたという気持ちになって、これを愛の手を伸ばして育てることになっている」と語っています。すなわち、新入社員は新しい子供だと思い、育てるそうです。
会社は、人間成長の道場であり学校です。経営者は、そのような覚悟をもって経営をすべきだと思うのです。