2024/08/25 21:04|カテゴリー:事業承継
事業を次の世代に引き継ぐ際、大きなお金が必要になることがあります。
そんなときに役立つのが、銀行や日本政策金融公庫が提供している「事業承継ローン」という制度です。
このローンを活用することで、事業承継のための資金調達が可能になります。
本稿では、この制度を利用する際のメリットとデメリット、申し込みの流れなど、これから事業承継を考える方々に向けわかりやすく解説していきます。
事業承継ローンとは、事業を次の人へスムーズに引き継ぐために必要な資金を借りるための特別な支援制度です。
私たちの身近な銀行や国が支援する金融機関から提供されています。
借りることができる金額は、数百万円から場合によっては数千万円にも上り、事業を引き継ぐ際のさまざまな費用に充てることができます。
しかし、多くの中小企業では、将来に備えて十分な資金を準備しているわけではありません。
事業承継のタイミングで資金不足に直面しないように、事前に計画を立て、事業承継ローンを上手に活用することが大切です。
事業承継ローンを活用するメリット・デメリットは、以下の通りです。
[メリット]
・初期投資
スムーズな資金調達が実現でき、少ない自己資金で事業承継が可能になり、経済的負担を軽減しながら、スムーズに事業を引き継ぐことができる
・財務の柔軟性
企業の財務状況を柔軟に保ち、手元に現金を保持することを可能にする
・事業継続の安定性
株式の所有比率を安定させ、将来的に他の資金調達をしやすくなるため事業の継続性と安定性が向上する
・様々な用途
借りた資金は、新しい機器の購入や新規事業の立ち上げなど、幅広い用途に活用できる
・税制のメリット
一部の事業承継ローンでは、税制面で優遇措置があり、税負担を軽減できるため経済的負担が減る
・後継者育成の機会
事業承継を行う過程で、後継者に事業運営のノウハウを伝承する機会にもなる
[デメリット]
・個人保証のリスク
場合によっては、事業主の家や車などの私物を保証として提供する必要があり、リスクが伴う
・余分な出費が発生
借りたお金に対して利息や手数料など追加費用が発生する
・審査の難しさ
ローンを申し込む際、事業の健全性や将来性、事業主の信用度などを審査するため、必ずしもローンが承認されるとは限らない
・手続きの煩雑さ
ローンの申請から実際にお金を手にするまで、多くの書類の準備や手続きが必要で、時間がかかるため計画が必要である
・返済の負担
借りたお金はいずれ返さなければならず、定期的な返済は事業のキャッシュフローに負担をかけることがある
事業承継の際に必要となる融資には、具体的に以下のような理由があります。
ここでは、これらの理由3つを分かりやすく解説します。
・株式や資産の購入
事業承継では、後継者が会社の株式や事業に必要な資産を購入することが一般的です。
これには大きな資金が必要となり、事業承継ローンを活用してこれらを購入することが可能になります。
例えば、製造業を営む会社であれば、製品を作るための工場や機械が必要です。
これらを購入するためには、通常、大きな一時的な出費が必要となります。
大きな設備や不動産など、高価な資産の取得では、事業承継ローンが役立ちます。
・税金の納付
事業承継に伴い、相続税や贈与税が発生することがあります。
これらの税金は、事業規模や承継の方法によって額が大きくなることがあり、適切な資金計画が必要です。
事業承継ローンを活用することで、これらの税金を期限内に支払い、事業の安定を保つことができます。
・事業運営資金
事業承継後は、新たな経営体制の下での事業の運営が始まり、日々の運営や将来の展開に向けた資金が必要です。
これには、従業員の給料、材料の購入費、新しい事業の開始費用などが含まれます。
事業承継直後は、これらの資金を確保するための準備期間が限られているため、事業承継ローンが役立ちます。
資金繰りに余裕を持ち、事業のスムーズな運営と成長をサポートすることができます。
資金計画をしっかりと立て、必要なお金を確保することが、事業の持続的な成長や発展につながります。
事業承継で受けられる融資には、主に以下2つの制度があります。
・日本政策金融公庫による融資制度
・銀行など民間金融機関による融資制度
これらの制度は、事業承継を支援するために提供されています。
それぞれの特徴については以下の通りです。
日本政策金融公庫が提供する「事業承継・集約・活性化支援資金」は、中小企業や個人事業主を対象とした支援策です。
政府が支援しているため、市場のローンよりも低い利率で資金を借りることができます。
これは、新たに事業を継ぐ人が、比較的簡単に必要な資金を手に入れられるよう支援しています。
ただし、支援を受けるためには、事業の将来性や現在の経営状態の健全さ、具体的な事業計画の提出など、一定の条件を満たす必要があります。
[利用対象]
1.中期的な事業承継を計画し、経営権を確保したい方
・事業承継計画の策定が必要な方
・経営権の円滑な移行を望む方
2.事業の承継や集約に関連する法律に基づいて認定を受けた中小企業者
・経営承継円滑化法に基づく認定を受けた方
3.経営者個人保証免除を申し入れ、資金調達が難しい方
・個人保証の免除を申し入れた方で、資金調達に課題がある方
4.事業の承継・集約を契機に新たな取り組みを図りたい方
・第二創業や新規事業への展開を考えている方
[資金使途]
事業承継等に必要となる設備資金および運転資金
[融資限度額]
別枠7,200万円(うち運転資金、4,800万円)
[返済期間]
設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内)
[利率]
原則 基準金利
ただし、一定の条件に該当する場合には特別金を適用
[担保・保証人等]
担保設定の有無、担保の種類などについては要相談
ただし、無担保無保証を希望する場合には、以下の制度を併用できる
・税務申告を2期終えていない方 ・・・新創業融資制度
・政務申告を2期以上終えている方・・・担保を不要とする融資制度、経営者保証免除特例制度
銀行や信用金庫などの民間金融機関も、事業承継に特化したローンを提供しています。
これらのローンは、事業を引き継ぐ後継者が資金を確保するためのものです。
金融機関によって条件は異なりますが、一般的には担保や保証人が不要な場合もあり、比較的審査が通りやすく設定されていることが多く、最大で5000万円までの借り入れが可能で、返済期間は最大10年とされています。
5年や10年の据え置き期間が設けられていることも多く、借りた資金で事業を安定させた後、余裕を持って返済計画を立てることができます。
これらの支援を活用することで、事業承継の時に必要なお金を手に入れやすくなります。
例えば、新しい事業のアイデアを実現したり、会社を大きく成長させるためのお金を用意することができます。
また、返済についても無理なく計画を立てられるため、事業運営に集中できます。
さらに、経営のノウハウや事業を効率的に行うためのアドバイスを得ることも可能であり、事業を安定させ、長期的に成長させるために大切な支援となります。
大切なのは、事業にぴったり合った支援を選び、そこから提供される資金を効果的に活用することです。
これにより、事業承継を成功に導き、会社を長く続けるための強い基盤を築くことができます。
日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」を利用する場合の基本的な流れは以下の通りです。
① 事業承継計画の策定
まずは、自分の事業をどう継承していくか、しっかりとした計画をたてます。
この計画には、高継者の教育や新しい体制の準備、相続税や贈与税に関する税対策など、事業承継に関わるさまざまな内容が含まれます。
計画書には、目標、戦略、行動計画を具体的に記述し、事業の現在の財務状況と将来の財務予測も記載します。
計画をしっかりとたてることで、何をすべきかが明確になり、大切なポイントを把握しやすくなります。
② 支店窓口で相談
計画書が完成したら、日本政策金融公庫の支店に行き、担当者に相談します。
このとき、会社の財務状況を示す決算書、会社案内など、具体的な資料を持参すると、承継計画をより詳しく説明することができます。
相談を通じて、資金の具体的な要件や条件を把握することができ、事業承継に向けての準備が整います。
③ 融資の申請
窓口での相談後、具体的なローン申請に移ります。
事業計画書、財務諸表、税務申告書、身分証明書など、さまざまな書類が必要になる場合があります。
必要書類を正確かつ詳細に準備し、手続きを進めます。
④ 審査
申請書類提出後、金融公庫による審査が行われます。
審査では、提出された書類の内容確認のほか、場合によっては現地調査や追加質問が行われることもあります。
担当者が事業場所を訪問したり、事業の実態や運営状況を直接事業者に直接質問するなど、申請内容の信頼性を評価します。
そのため、事業や計画の内容を十分に理解し、説明できるようにしておくことが大切です。
自分の事業について詳しく説明することで、融資の審査がスムーズに進む可能性が高まります。
⑤ 融資決定・貸付契約
審査を通過すると、事業承継ローン貸付契約の手続きに入ります。
具体的な貸付条件が決まり、契約書が作成されます。
ローン額、利率、返済期間、返済スケジュールなどが明確になります。
契約内容をしっかり理解し、同意の上で署名します。
その後、約束された資金が提供され、事業承継資金として活用できます。
⑥ 返済開始
ローンを受けた後は、約束された計画に従って返済を開始します。
通常、指定された銀行口座から自動引き落としで行われます。
返済は一般的に、金融公庫との契約に基づいて設定されたスケジュールに従って行われます。
返済計画は事前にしっかりと立てておき、無理のない範囲で計画的に返済を進めることが重要です。
以上の流れに沿って、日本政策金融公庫からの事業承継ローンの利用が進められます。
一つひとつ丁寧に進めることで、事業承継に必要な資金を確保し、スムーズな事業承継を実現することができます。
審査に通らない場合、融資を受けることができないことがあります。
審査では、事業の信用や返済能力などが評価されます。
万が一審査に通らない場合でも、諦めずに他の方法を探すことが大切です。
融資以外にも、事業承継の資金調達方法はいくつかあります。
その他の支援制度は以下の通りです。
・経営承継円滑化法における信用保証
この制度は、中小企業の銀行融資を利用しやすくするため、信用保証協会が融資額の一部を保証します。
つまり、後継者がもし返済できなくなった場合でも、信用保証協会がそのお金を代わりに支払います。
銀行はリスクを少なくして融資を行うことができ、特に資金が少ない後継者でも融資を受けやすくなります。
・利用方法
最寄りの信用保証協会に相談して、事業承継計画や財務情報などを提出して申請を行います。
普通保険 [通常枠] 2億円 [別枠] +2億円
無担保保険 [通常枠] 8000万円 [別枠] +8000万円
特別小口保険 [通常枠] 2000万円 [別枠] +2000万円
(参考 https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/shoukei_enkatsu/kinyushien_pamphlet.pdf)
・事業承継特別保証制度
この特別保証制度は、特に事業承継を目的として設けられており、信用保証協会が融資額のほとんどを保証します。
これにより、後継者が自己資金が少ない場合でも、必要な資金を簡単に確保しやすくなります。
大きな保証があるため、銀行はより安心して融資を行うことができ、後継者は必要な資金を確保しやすくなります。
また、利息が低い場合や返済期間が長く設けられることなど融資条件が改善されます。
・利用方法
最寄りの信用保証協会に相談し、事業承継計画や財務情報などをもとに申請を行います。
[利用対象]
次の1又は2に該当し、かつ3に該当する中小企業者
1.保証申し込み受付日から3年以内に事業承継を予定する事業承継計画を有する法人
2.令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人であって、事業承継日から3年を経過していないもの
3.次の(1)から(4)までに定めるすべての要件を満たすこと
(1)資産超過であること
(2)EBITDA有利子負債倍率※が10倍以内であること
※EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社責-現預金)÷(営業利益+減価売却費)
(3)法人・個人の分離がなされていること
(4)返済緩和している借入金がないこと
[資金用途]
事業資金
既存のプロパー借入金(個人保証有)の本制度により借り換えも可
[保証限度額]
2億8,000万円
(参考 https://www.zenshinhoren.or.jp/model-case/shokei/)
国や地方自治体が提供する補助金で、事業承継にかかる費用の一部を補助します。
例えば、後継者の育成の研修費用や、事業承継に伴う法務・財務の相談、事業承継計画作成のための専門家への相談費用などが対象になることがあります。
補助金は返済の必要がないため、資金の負担を軽減しながら事業承継を進めることができます。
・利用方法
補助金の公募情報をチェックし、申請書類を準備します。
事業承継計画を含め、補助金の要件に合致する内容を明確に記載し、指定された期間内に提出します。
申請方法についてわからないことは、事前に問い合わせるか、専門家を活用します。
事業承継に伴う相続税や贈与税の負担を軽減するための税制優遇措置です。
国の承認を受けることで、税金の負担の軽減することが可能になります。
・利用方法
専門家の協力を得て、承認を受けられる事業承継計画を作成し、国税局に提出し承認を受けます。
これらの制度を活用する際は、しっかりとした計画と準備が必要不可欠です。
各制度の詳細は、関連機関への問い合わせや、法務・税務の専門家との相談を通じて、最適な支援を受けましょう。
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事業承継に必要な資金や融資については、お気軽に「この街の事業承継」までご相談下さい。
資金調達の選択は、事業の未来を大きく左右します。
さまざま融資制度がありますが、それぞれに返済義務が伴います。
重要なのは、各制度の特徴をきちんと理解し、条件や返済義務に注意深く目を向け自分の事業にとって最適な方法を慎重に選ぶことです。
法務・税務の専門家としてわかりやすくお伝えします。
熊本で25年、弁護士の西田幸広です。
2024/08/09 12:00|カテゴリー:事業承継
多くの中小企業が直面する後継者問題に、新たな解決策として「ファンド」という選択肢があります。
このファンドは、新しい後継者を見つけ出し、企業の継続を支援するため方法で企業は安定した将来へと進むことが可能となります。
しかし、利用する際には、そのメリットやデメリット、選び方に注意が必要です。
本投稿では、事業承継ファンドの基本を、わかりやすく解説します。
事業承継ファンドは、後継者不在で困る中小企業を支援する制度です。
多くの中小企業が後継者を見つけられずに経営の危機に直面しており、お金を借りることも以前より難しくなっています。
さらに、経営の知識や経験が不足している場合も多いため、ただお金を貸すだけでなく、経営のアドバイスを受けられる事業承継ファンドは大きな助けになります。
このファンドを利用することで、多くの投資家から中小企業は必要な資金を得て、新しい経営者を見つけ、経験豊かな専門家の経営サポートを得ることができます。
事業を次の世代に引き継ぎ、安定した成長を目指すことができるのです。
後継者がいない状況でも企業を守るための「助け合い」の仕組みです。
事業承継ファンドが注目されている背景は以下の通りです。
・後継者不在による中小企業の経営危機が増加している中、伝統的な事業承継方法だけでは対応が難しくなっている
・銀行の貸し出し条件が厳しくなり、特に中小企業が資金を集めるのが一層難しくなっている
・経営資源や専門知識の不足が、中小企業の成長機会を制限しており、外部からの支援が求めれている
・経営コンサルティングや専門的なアドバイスという、従来の融資にはない価値を提供している
事業承継ファンドは中小企業にとって成長へ向けた新たな選択肢のひとつとして注目されています。
事業承継ファンドとM&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)はどちらも成長戦略や会社の未の形を作る大切な手段ですが、その目的や使われ方には大きな違いがあります。
[事業承継ファンド]
主に後継者不在による経営危機に直面している中小企業を対象としています。
新たな経営者や事業継承者を見つけること、または現経営者に対する経営支援を行うことを目的として設立されます。
資金提供に加え、経営コンサルティングや専門家によるアドバイス、経営資源の提供など、経営面でのサポートを重視します。
[M&A]
会社が市場シェアの拡大やシナジー効果の実現、新しい分野に手を広げたいときに使われます。
成長戦略や競争力強化の一環として実施されることが多いです。
買収、事業部門の売却、合併など様々な手法を含み、財務面での取引が中心となり、買収資金の調達、評価額の算定、交渉、契約締結といった流れです。
事業承継ファンドは特に後継者問題を抱える中小企業の支援に焦点を当てており、「後継者を見つけて、スムーズにバトンタッチするためのサポート役」で、
M&Aは戦略的手段であり「力を合わせて、もっと大きく強くなるための手法」です。
事業承継ファンドを活用できる場合は以下の通りです。
・親族や社内に後継者候補がいない
家族や会社の中に、会社を継ぐ人が見当たらない場合
事業承継ファンドを活用して、外部から、新しい経営者を探すお手伝いをします。
・後継者候補はいるがまだ経験が浅い
後継者がいても、その人がまだ経営に必要なスキルや経験を十分に持っていない場合
事業承継ファンドから派遣される専門家やコンサルタントが、実務のトレーニングや経営戦略など経営のコツを教えるサポートを提供します。
・後継者候補に資金力がない
後継者はいるが、事業を引き継ぐための資金が不足している場合
後継者が会社の株式を取得するには相当な資金が必要です。
しかし、後継者の資金力が十分でないケースも少なくありません。
後継者は一旦事業承継ファンドに株式を売却し、その後、ファンドの支援を受けながら資金を積み立てます。
資金が十分に積み立てられた段階で、後継者はファンドから株式を買い戻すことができます。
・現在の経営陣に経営を任せたい
現在の経営者が引き続き会社をリードしたいが、支援が必要な場合
現経営者が経営を続けたい場合、複数の支援を提供します。
資金提供だけでなく、経営戦略の見直しや事業効率化などのアドバイスも含まれます。
経営者が会社の運営を続けることを望む場合、ファンドに一部の株式を売却し、経営権を維持しつつ外部からの資金と専門知識を得ることができます。
しかし、経営者は会社の一部所有権をファンドに譲渡する代わりに、経営権を守るために、もう一度、一部の株式に投資する必要があります。
事業承継ファンドを活用すると以下のようなメリットがあります。
メリットの詳しい内容は以下の通りです。
・意図に沿った事業承継ができる
経営者やオーナーは、自分の思い描く未来計画に合った形で、会社を次の世代に渡すことができます。
例えば、信頼できる従業員に経営を任せたい、または特定の分野で会社を成長させたいなど、具体的な目標に合わせた承継計画を立てることが可能です。
また、経営者がやりたいこと以外には干渉しません。
会社の文化や思いを大切にしながら、必要なときにだけサポートを受けることができます。
・経営支援を受けられる
資金の支援だけでなく、経営の専門家や業界によるコンサルティングサービスを受けることができ、戦略の策定、財務の管理、業務の効率化など、さまざまな側面で手厚い支援が受けられます。
特にご高齢の経営者にとって、このような経営サポートは心理的な負荷を軽減する効果があります。
戦略相談や意思決定のサポートを通じて、経営者は孤立感やストレスを感じることなく、健全な経営を実現することが可能になります。
・売却益を得られる
経営者やオーナーは、自分が持つ会社の株式を事業承継ファンドに売却することで、その売却から得られる利益を手に入れることができます。
このお金は、退職後の生活資金や、新たなビジネスへの投資など、自由に使うことができます。
経営者は負担なく事業を受け継ぎ、将来に備えることができるのです。
・企業理念・文化を維持できる
ファンドの主な目的は、企業の持続可能な成功を促進し、企業価値を向上させることです。
これは経営者と一緒になって目指す目標です。
長年築いてきた文化や伝統を守り、社員や顧客との絆を維持しながら、これらの価値を守ることに注力します。
この取り組みは、地域社会にも良い影響を及ぼし、長く繁栄するための基盤を築きます。
事業承継ファンドを通じて、過去を尊重しつつ安定した環境で成長を続けることができるのです。
事業承継ファンドを利用する際に考慮すべきデメリットは、以下の通りです。
・経営権の部分的な放棄
事業承継ファンドから資金を受け入れることは、一部の経営権をファンドに譲渡することを意味する場合があります。
経営者は自由な意思決定を行う上で制約を受ける可能性があります。
・利害関係の複雑性
経営目標や方針においてファンド側の意向を考慮する必要が生じ、経営判断が複雑になる場合があります。
・財務負担の増加
ファンドからの資金提供は返済義務を伴うことが多く、利息や配当などの形で将来的に企業の財務負担が増加するリスクがあるため注意する必要があります。
・企業文化のずれ
ファンドから派遣される経営支援チームと企業の既存の経営陣との間で、企業文化や価値観の相違が生じることがあります。
事業承継ファンドの活用を検討する際には、これらのデメリットを十分に理解し、企業にとって最適な決定を行うことが重要です。
事業承継ファンドは国内にいくつもあります。
その中でも代表的な事業承継ファンドを紹介します。
[中小機構の事業承継ファンド]
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する事業承継ファンドは、公的視点からアドバイス提供をしてくれます。
民間よりも中小企業へのサポートが得意で、新規事業の創業や拡大も積極的に行っています。
中小企業の事業承継や成長支援で特に広く利用されています。
[日本投資ファンド]
日本M&Aセンターと日本政策投資銀行が共同設立したファンドは、たくさんの会社の引き継ぎの実績と経験があります。
全国の地域銀行と協力して、地元の会社を支援しています。
審査の難しさも比較的低く、中小企業にとって手軽に相談できる特長があります。
[SBI地域事業承継ファンド]
SBI地域事業承継ファンドは、地域の発展を目指し、後継者不足に悩む中小企業への支援を目的としています。
他のファンドとは違い、小さな企業にも投資し、地域経済の活性化を図っています。
これにより、地域の中小企業が持続可能な事業承継を実現できるようサポートしてくれます。
[PE(プライベートエクイティ)ファンド]
PE(プライベートエクイティ)ファンドは、日本プライベートエクイティ株式会社が運用する資金です。
中小企業経営者の事業承継問題に苦しむ方を支援し、出資します。
特に、従業員の自立を促進し、オーナー経営から組織経営への移行をサポートするのを得意としています。
PEファンドは、企業の持続的な成長や経営改善を促進し、中小企業を支える重要な仕組みとなっています。
自社に最適な事業承継ファンドを選ぶための大切なポイントは以下の通りです。
・支援内容や特徴を理解する
事業承継ファンドは、資金提供だけでなく、経営改革、事業拡大、新しい市場への進出など、様々な支援を行います。
ファンドによって、得意とする分野や提供するサービスが異なるため、自社の事業戦略や必要とする支援に合致するファンドを選ぶことが重要です。
たとえば、技術革新が必要な場合は、その分野に強みを持つファンドを選びます。
事業承継ファンドには、「直接投資型」と「貸付型」という2つの主要な形式があり、それぞれが異なる特徴を持っています。
[直接投資型ファンド]
ファンドが企業に直接資金を提供し、その企業の一部の株式を取得します。
この方法で、ファンドは企業の経営に一定程度関与することになります。
企業に直接お金を投じ、経営改善や戦略策定の専門的アドバイスを提供し、必要に応じて、新しい経営者を連れてくることもあります。
(直接投資型ファンドは経営に積極的に関わりたい場合や、大規模な変革を目指す企業に適しています)
[貸付型ファンド]
ファンドが企業に対して貸し付けを行い、将来的にそのお金を返済してもらう形式です。
この場合、ファンドは企業の株式を取得せず、経営への直接的な関与はありません。
お金の貸し付けに加えて、経営の効率化や改善に関するアドバイスも提供されます。
企業は経営権をそのまま保持しながら、外部からのサポートを受けることができます。
(貸付型は経営権を保持したまま、資金や専門的なサポートを必要とする企業に適しています)
・過去の実績を確認する
これまでにどのような企業の事業承継を支援してきたか、その成功事例や実績を調べます。
同業種や類似の経営課題を持つ企業への支援の実績があるファンドは、専門知識や経験が豊富である可能性が高いです。
ファンドの過去の成果や評判を調査することは、そのファンドが自社にとって有益かを判断する上でとても重要です。
特に、類似の業界や規模の企業に対する成功事例があるか、また過程で企業の文化をどのように扱ったか、を確認することが推奨されます。
・担当者との相性を見極める
担当者が会社のビジョンや文化を理解し、長期的なパートナーシップを通じて適切なアドバイスを提供できるかが鍵となります。
長期間にわたる関係になるため、会社の文化や価値観に共感し、それに基づいたサポートを受けられるかどうかを見極めます。
また、事業承継では多くの決定が求められるため、担当者との間で迅速かつ柔軟な意思決定が可能であること、そしてスムーズなコミュニケーションが維持できることも重要です。
事業承継は、法的、財務的、そして経営戦略的な複雑な課題を含むため専門家のサポートが必要不可欠です。
特に重要な理由は以下の通りです。
・法的安全の確保
弁護士や法務顧問が、契約書の作成や法的リスクの評価、コンプライアンスの確認を支援し、将来的な法的紛争を未然に防ぎます。
・財務・税務の最適化
会計士や税理士は、事業承継に伴う財務構造の再編成や税務戦略を提案し、適切な財務計画により、承継後も企業の財務健全性を保つことができます。
・経営戦略の策定
市場の変化や業界トレンドに基づく中長期戦略を、専門家がサポートします。
これにより、承継後も企業の持続的成長が促されます。
専門家からのアドバイスを受けることで、企業と経営者のニーズに合った最適な解決策を見つけ出せます。
事業承継は、単なる経営権の移譲以上のものであり、企業の将来に重大な影響を及ぼすため、専門的な知見の取り入れが必要です。
事業承継ファンドを活用した事業承継の流れは以下の通りです。
・自社の現状把握
事業承継を進める際、まず自社の現状を把握し、具体的なニーズを明確にします。
後継者不在、資金不足、成長戦略の策定が必要など、様々な課題が考えられます。
・ファンドの種類理解
「直接投資型ファンド」と「貸付型ファンド」の違いを理解し、自社に最適なものを選びます。
直接投資型はファンドが経営に参加し、貸付型は資金提供のみとなります。
・ファンドの選定
いくつかのファンドに連絡を取り、自社の状況を説明してみます。
支援内容、過去の実績、担当者との相性などを見極め、大まかな条件について話し合い、ファンドを選定します。
・初期交渉
選定したファンドと直接会い、基本条件や支援範囲について話し合います。
この段階で予備的な合意に達することが目標です。
・デューデリジェンス
ファンド側が、財務状況、経営状態、市場の位置づけなど、会社のあらゆる側面をチェックします。
この過程で、会社の必要な情報をすべて提供する必要があります。
・契約締結
デューデリジェンスの結果に基づき、資金提供の条件や経営参加への度合いを含む具体的な契約を締結します。
・支援開始
契約に基づき資金が提供され、支援が開始されます。
支援には、資金面だけでなく経営コンサルティングや戦略策定のサポートが含まれることがあります。
・定期的なフォローアップ
ファンドと定期的に進捗状況を共有し、必要に応じて計画の調整を行います。
・ファンドの退出
事業承継の目標が達成され、企業が安定した段階に達したら、ファンドは段階的に企業から撤退します。
貸付型ファンドの場合は全額返済が完了し、直接投資型の場合はファンドが保有する株式を売却して退出します。
このような流れを経て、企業は新たな段階へ安心して進む準備が整い、事業承継ファンドがその重要な支援を提供します。
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事業承継ファンドを検討される際は、専門家である「この街の事業承継」にご相談下さい
事業承継ファンドについて興味はあるけれども、まだ理解しきれていない部分が多い・・とお感じかもしれません。
確かに、この分野は新しく複雑な情報が多く、すぐには理解が難しいかもしれません。
新しい領域への一歩は、多くの疑問や不安を伴います。
しかし、それは成長への第一歩であるともいえます。
わからないこと、気になることがあれば、どうぞ遠慮なくお尋ねください。
最適な事業承継の方法を一緒に見つけ出し、わかりやすく丁寧にご説明することをお約束します。
私自身も新しい情報を学び続け、常に最新の知識をお伝えするために努力してまいります。
熊本で20年間、弁護士・司法書士として活動している西田幸広です。
2024/08/02 12:00|カテゴリー:事業承継
中小企業の事業承継において、株式譲渡はよく選ばれる手段の一つであり
その方法は、主に【贈与】【相続】【売買】の3つに分けられます。
本投稿では、それぞれの方法を通じた事業承継の手順や成功の鍵となるポイント、各方法が持つ独自の特徴について、わかりやすく解説していきます。
株式譲渡による事業承継では、現在の経営者(譲渡者)が自分の持っている会社の株式を、新しい経営者(受譲者)に渡します。
新しい経営者が会社の経営権を引き継ぎ、会社を運営していくことになります。
株式譲渡は、現経営者の持っている経験や人脈など、会社の運営をスムーズに引き継ぐことができますが、譲渡の方法、価格設定、税金など、事前にしっかりと検討すべき重要なポイントがあります。
株式譲渡による事業承継のメリット・デメリットは以下の通りです。
[メリット]
・比較的簡単に手続きができる
・株式譲渡で迅速な経営権移行、事業継続が可能
・資産やネットワークを受け継ぎ、経営の基盤が安定的に構築される
・従業員や取引先の確保ができる
[デメリット]
・資金、税金の負担
・譲渡時の複雑な税金計画
・簿外債務や訴訟リスクも引き継ぐ
・株式の客観的な評価が難しい
株主とは、会社の一部を所有している人のことです。
会社の株式を持っていると、いくつかの特別な権利があります。
・配当金を受ける権利
会社が利益を出したとき、その一部を株主に分配される権利です。
配当は、会社の利益に応じて株主に支払われるお金のことです。
・残余財産分配の権利
会社が解散することになった場合、借金などの債務を全て清算した後に残った資産は株主に分配されます。
持っている株の分だけ、残った資産を受け取ることができる権利があります。
・株主総会への参加の権利
年に一度開かれる株主総会に参加し会社の経営に参加し関与する権利を持ち、会社の経営方針や重要な決定に対して、意見を言ったり、投票によって影響を与えることができます。
・情報取得権
株主は、定期的に会社の業績や計画に関する情報を受け取る権利があります。
会社の現状や将来の方向性を理解することができます。
これらの権利により、株主は自分の投資を守り、会社の運営に一定の影響を及ぼすことができます。
ただし、株式の種類によっては、これらの権利に違いがある場合がありますので注意が必要です。
会社が自分の株式を保有することには、いくつか重要な意味があります。
・自社株の保有
自社株を持つことは、会社が自分で自分の株を買うことです。
これには大きく4つの理由があります。
①経営権の保護
会社が自分の株を持っていると、外部の人が会社を勝手にコントロールするのを防げます。
市場に出ている株が少なくなると、他の人が多くの株を集めて会社を支配するのが難しくなります。
②株価の安定
会社が自分の株を買うと、その株は市場からなくなるので、株の価格が急に下がったり上がったりするのを防げます。
これは、株の価格を安定させるのに役立ちます。
③資本構成の最適化
会社が利益を出しているけど、そのお金をどう使っていいかわからないときに、自分の株を買うことは、お金を賢く使う方法の一つです。
これにより、会社のお金の使い方をより効率的にできます。
④株主還元の強化
会社が利益を出したら、そのお金は株を持っている人たちに還元されます。
自社株を買えば、分配する株の数が減るので、一株当たりの利益が増え、株主にとってより良い条件になります。
・決議の種類
重要な決定を行う際には、株主総会での決議が必要になります。
普通決議では株式の50%以上、特別決議では株式の67%以上が必要となります。
取締役の任命、決算の承認、株主総会の招集などが決定されます。
株をどれだけ持っているかによって、会社の決定にどれだけ影響を与えられるかが変わってきます。
普通決議と特別決議の違いは以下の通りです。
[普通決議]
株主総会で50%以上の賛成があれば可決
・取締役の任命や解任
・決算の承認
・株主総会の招集
・普通株主に対する新株の発行
・役員報酬の承認
・通常の業務遂行に関する事項
[特別決議]
株主総会で株式の67%に賛成で可決
・会社の憲法(定款)の変更
・株主に対する優先株の発行
・企業の合併や分割
・重要な資産の譲渡や売却
・法人格の変更や解散
事業承継とは、現在の経営者が会社を次の人に引き継ぐことで、主に3つの方法があります。
1つ目は 家族内で事業を引き継ぐこと
親族内事業承継 ・・・親から、子や親戚に経営を引き継ぐ方法
2つ目は 会社の従業員に引き継ぐこと
親族外事業承継 ・・・家族以外の人が経営を引き継ぐ方法
3つ目は 外部の誰かに事業を売ったり譲ることです
第三者継承(M&A) ・・・M&Aは会社同士が手を組んで、もっと大きくて強い会社を作る方法
・事業譲渡
事業譲渡は、企業が経営する一部の事業を他の会社に譲る方法です。
この方法では、特定の事業分野や資産を選択し、譲渡できます。
株式譲渡との違いは以下の通りです。
【対象の範囲】
株式譲渡: 会社全体の株式を譲渡
事業譲渡: 会社が営む特定の事業の一部を譲渡
【許認可の引き継ぎ】
株式譲渡: 譲渡先が会社全体を引き継ぐため、許認可も引き継げる
事業譲渡: 特定の事業のみを譲渡するため、許認可は引き継げない
【消費税の課税】
株式譲渡: 通常は消費税が課されない
事業譲渡: 譲渡対象に消費税課税資産が含まれていれば、消費税が課されることがある
株式譲渡には、【贈与】【相続】【売買】の3つの方法があります。
・贈与・・・無償で株式を他者に譲渡する方法
贈与とは、経営者が自分の会社の株式を他人に無料で渡すことです。
家族経営の事業でよく見られる方法で、例えば親が子どもに会社の一部を渡すときに使われます。
ただし、もらった株の価値によっては、贈与税がかかることがあります。
贈与税は、もらった財産の価値に基づいて計算されますが、年にもらえるものの総額が一定の金額以下なら税金は発生しません。
会社を次の世代にスムーズに渡すために便利ですが、税金の面では注意が必要です。
贈与についてのメリット・デメリットは以下の通りです。
[メリット]
・株式取得の為の資金は必要ない
・相続よりも税金が少なく済む場合がある
・生前贈与することで事業承継が円滑に進みやすい
・後継者が早い段階から経営に携わり、経営能力の向上が期待される
[デメリット]
・贈与税がかかる可能性があり一定の金額以上は税金の負担が発生する
・贈与税の支払い、経済的影響が引継ぎ後、財政に影響を与える可能性がある
・法定相続人が遺留分を主張し、資産の権利を侵害する恐れがある
相続は、経営者が亡くなった時に、その人の持つ会社の株式が法律に基づいて家族に移ることです。
どの家族がどれだけの株を受け取るかは、遺言書や家族間の話し合いによって決まります。
全資産の価値が特定の額を超えない限り、相続税はかかりません。
相続についてのメリット・デメリットは以下の通りです。
[メリット]
・相続税の基礎控除額が大きい
・株式取得のための資金が必要ない
・遺言書を遺しておけば後継者の指定が可能
・法定相続人には遺留分が保護され、公平性が確保される
・資産や株式の所有権が相続人に引き継がれ、経営権を保持可能
[デメリット]
・一定の範囲を超えると相続税が課され、その支払いが必要となる
・相続人が複数の場合、資産分割や相続財産に関する対立が生じる可能性がある
・他の相続人から遺留分を主張される可能性がある
・承継のタイミングが読めない
売買は、経営者が自分の会社の株式を他の人に売ることです。
このとき、株を高い価格で売れば売るほど、その差額分、つまり利益には税金がかかります。
利益の計算は、売った金額から元々その株を買ったときの金額を引いたもので、個人は譲渡所得税、法人は法人税の対象になります。
会社の拡大や新しい事業を始めたいときに選ばれますが、取引を進める際には税金の計算や契約書の準備が必要です。
売買のメリット・デメリットは以下の通りです。
[メリット]
・スムーズな事業承継が行える
・資産を現金化し、新たな投資や事業展開に活用できる
・遺留分を主張される可能性がない
・経営者の廃業コストを抑えられる
[デメリット]
・売却益に対して課税され、資金の一部が税金での支出となる
・株式の買収資金が必要
・デューデリジェンス(※)の手間とコストがかかる
※デューデリジェンスとは
企業同ディが取引をする前に、リスクを調査すること。
財務、法務、経営層、市場など、さまざまな側面から情報収集を行い、意思決定の基盤を築くこと。
特に小さな会社(非上場企業)の多くは、自社の株式に譲渡制限を設けています。
これは、株主が自由に株式を他者に売買できないようにするための決まりごとです。
この手続きには以下の流れがあります。
①株式譲渡承認の請求
まず現経営者(譲渡人)は、会社に対して自分が持つ株式を後継者(受益者)に移したいことを正式に示す必要があります。
これを「株式譲渡承認請求」と言います。
譲渡する株式の詳細や後継者の情報、引き継ぐ際の条件などが記載されます。
②株式譲渡承認機関の承認
【取締役会がある場合】
会社の将来に悪影響がないか、株式譲渡が会社の方針に合っているかなど、取締役たちが集まってしっかり話し合います。
結果は、株式を譲りたいと思っている人(承認請求者)に、2週間以内に知らせます。
【取締役会非設置会社の場合】
取締役会がない会社では、株式の譲渡について決めるために臨時の株主総会を開くことになります。
すべての株主の意見を聞き、株式を譲ることに賛成か反対かを投票してもらいます。
結果は、株式を譲りたいと思っている人(承認請求者)に、2週間以内に知らせます。
③株式譲渡契約書の締結
株式譲渡が会社から承認されると、譲渡側と譲受側は株式譲渡契約書を締結します。
この契約書には
・譲渡日: いつ株を渡すのか
・代金: いくらで株を買うのか
・支払方法: 代金はどうやって払うのか
・支払期日: いつまでに払うのか
・契約解除条件: もし何か問題があったら、契約をやめることができる条件
など、細かい条件が書かれています。
条件に両方が納得して、契約書にサインすることで、後でトラブルが起こらないように、きちんと法的に保護されます。
もし、生きているうちに誰かに株をあげる「生前贈与」をする場合も、同じように「贈与契約書」を作成し、どんな条件で株をあげるのかを決めます。
これもまた、両方が納得した上でサインをすることで、贈与の条件が法的に守られるようになります。
④株主名簿の書き換え
株式が新しい持ち主に渡った後、「株主名簿」の書き換えが必要です。
この手続きは、会社の株を持っている人の名前や株の数を正式に記録するものです。
株を譲る人と受ける人が一緒に会社に申請をし、名簿に新しい株主の名前が記されます。
中小企業では実際の株券を発行していないことも多いため、この名簿に名前がしっかり記されていることが、その人が株主であるという証拠になります。
株主名簿記載事項証明書を受け取り、新たな所有者としての権利が法的に確認され、経営権の移行となります。
譲渡手続きの必要書類は、以下の通りです。
・株式譲渡承認の請求書
株主が株式を他の人に譲りたいときに提出する書類。
何のために譲りたいのか、どんな条件で譲りたいのかを書きます。
・締役の決定書(取締役会がある場合)
会社の取締役会が株主総会を呼びかけるときに使う書類。
取締役会が株主総会を開く権限があることを示します。
・臨時株主総会の招集通知書
急に必要になった株主総会を開くときに、通知するための書類。
株主に日時や場所を知らせます。
・臨時株主総会の議事録
臨時株主総会で話し合われた内容や決定事項を詳細に記録した書類。
会議の進行状況や株主の発言、採択された決議内容が含まれます。
・株式譲渡承認の通知書
株主総会で議決された株式譲渡の承認を通知する書類。
譲渡が正式に認められ、手続きが進むことが伝えられます。
・株式譲渡契約書
株式を売る人と買う人が取り交わす契約書。
取引の条件や価格、引き渡し日などが記載されます。
・株主名簿
会社の株を持っている人を一覧で示した書類。
株主の氏名や所有株式数が記載され、組織の所有構造を示します。
・株主名簿の書き換え請求書
株式の譲渡後に、株主名簿に新しい株主の情報を加えるために提出する書類。
・株主名簿記載事項証明書の交付請求書
株主名簿に書かれた情報の正確さを証明する書類をもらうために提出する書類。
・株主名簿記載事項証明書
株主名簿に記載されている情報が正しいことを証明する書類
法的な手続きなどで必要になります。
株式を他の人に売る場合、その売却益には「譲渡所得税」がかかります。
この税金は、売った金額とその株式を買ったときの金額の差額に基づいて計算されます。
税率は、いくつかの条件や特例によって変わることがあるため、上手な税金対策がとても重要になります。
たとえば、長く株式を持っていた場合の優遇措置や、法人の構造を活用することで、税金を減らすことができる可能性があります。
・贈与及び相続による株式譲渡の場合
株式を家族などに譲るとき、贈与や相続が関わってきます。
これらの方法で株式を渡す場合、普通に物を売って得た利益にかかる「譲渡所得税」はかかりません。
しかし、贈与や相続には別の税金が関係してきます。
[贈与の場合]
ある人から別の人へ無料で株式を渡すことを贈与といいます。
贈与された株式の価値によっては「贈与税」がかかることがあります。
ただし、年間で受け取る贈与の総額が一定額以下なら贈与税はかかりません。
[相続の場合]
誰かが亡くなったときに、その人の持っていた株式が家族などに引き継がれることを相続といいます。
相続で株式を受け取ると、その価値に応じて「相続税」がかかります。
株式を贈与する場合も相続で受け取る場合も、通常の譲渡所得税は心配ないのですが、贈与税や相続税には注意が必要になります。
[個人の場合]
個人が株式を売ったときの利益には、所得税・復興特別所得税・住民税がかかります。
この税金は、「売った金額」から「買ったときの金額や手数料」を引いた金額で計算されます。
譲渡所得額 = 譲渡対価 -( 株式の取得費 + 手数料 )
[法人の場合]
会社が株式を売った場合、その利益には、法人税がかかります。
法人税額 = 譲渡所得 × 法人税率
実際の税金の計算は、売却益の大きさや、利用できる税法上の特例によって異なり、持っている資産や株式を売る目的によっても変わるため、専門家と相談しながら計画し、自分の状況に合った最適な税務対策を考えましょう。
株を相続すると、受ける人には「贈与税」や「相続税」がかかります。
この時、贈与側が選ぶ課税の方法には2つあります。
①暦年課税
暦年課税は、毎年少しずつ税金を分割して払っていく方法です。
この方法は、一度に大きなお金が必要にならずに済むので、負担が少なくなります。
②相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、相続のときに一気に税金を払う方法です。
この方法は、相続が起きたときに、最初に一括で支払うので、その後は税金の心配がなくなります。
ただし一度「相続のときに一気に税金を払う方法」を選ぶと、変更は難しくなるのでどちらの方法を選ぶか、よく考えて決める必要があります。
事業承継税制は、中小企業が次世代に安心して事業を引き継ぐため支援策です。
相続や贈与による税金の支払いを延期できるため、新しい経営者がすぐに重い税金を払う心配がなくなります。
ただし、後継者が事業を続ける意思があり、特定の条件を満たす必要があること、県知事の認定と税務署への申告が必要です。
事業の受け継ぎを成功させるための大切なポイントは以下の通りです。
・株式に譲渡制限がないかを確認する
非上場企業、特に家族経営の会社では、株式を自由に売買できないようにする「譲渡制限」があることが多いです。
事業承継を考えている場合、まずはこれらの制限があるかどうかを確認しましょう。
制限があると、後継者への引き継ぎが難しくなるからです。
これらの制限は、会社の取り決めである「定款」や「謄本」と呼ばれる書類に書かれていることが一般的です。
定款には、会社の基本的なルールや株式の譲渡に関する規定が書かれています。
不明な点があれば、会社の法務担当者や外部の専門家に相談しましょう。
・ 非上場企業は適正価格に注意する
株式を譲渡する際には、その「価格設定」が非常に重要です。
正確な設定ができなかった場合、実際の価値を見誤り、適正価格よりも低い金額で売ってしまう可能性があるからです。
特に非上場企業では、株価が市場で決まるわけではないため、公正で適正な価格を設定しなければいけません。
会社の財務状況、業績、市場の状況などを総合的に分析し、適正な価格を算出します。
これには専門的な知識が必要なため、市場の動きや財務データを詳細に分析できる経験豊富な専門家に依頼しましょう。
経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を助ける法律です。
主な支援内容は以下の通りです。
・税制支援
贈与税や相続税の納税猶予・免除制度が認定されます。
会社を誰かに渡すときには税金がかかりますが、この法律を使うと、税金を払うのを待ってもらえることや、場合によっては払わなくてもいいことがあります。
・金融支援
中小企業信用保険法や日本政策金融公庫法に特例が認定されます。
中小企業がお金を借りるときに保証してくれる制度や、国からお金を借りるときの特別なルールが適用されることがあります。
・遺留分に関する民法の特例
会社を引き継ぐときの家族間のルールを、もっと柔軟に決められるようになります。
家族間で揉め事が少なくなり、会社を引き継ぐ人が、スムーズに事業を続けられます。
・所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定
会社の株を持っている人がどこにいるかわからなくても、特定の手続きで問題を解決できます。
会社の株式の扱いが簡単になり、事業承継を進めることができます。
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株式譲渡による事業承継を成功に導くため、この街の事業承継がお手伝いいたします
事業承継は、複雑な面も多いです。
適切な株式の管理、会社価値の正確な評価、そして効果的な税務計画の策定・・・
トラブルを避け、円滑に事業を引き継ぐためには、慎重に考えるべきことがたくさんあります。
株式の公正な分配、会社の価値をしっかり評価し、税金の負担を最小限に抑える計画など、次の代に安心して引き継ぐためには、細心の注意と丁寧な準備が大切です。
一つひとつの問題に対して、私、弁護士の西田幸広がわかりやすく解説します。