弁護士法人 Si-Law

西田ブログ

経営

ミッション

イソップ寓話「3人のレンガ職人」

 

世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。

旅人はその男のそばに立ち止まって、「ここでいったい何をしているのですか?」と尋ねた。

何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」
男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。
「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」

旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。

もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。
先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。
旅人は尋ねた。「ここでいったい何をしているのですか?」

俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。
「大変ですね」旅人はいたわりの言葉をかけた。

「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べていくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ。」

旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。

また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。
「ここでいったい何をしているのですか?」旅人は興味深く尋ねた。

「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!
「大変ですね」旅人はいたわりの言葉をかけた。
「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」

旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。

 

企業にはビジョンとミッションが必要だと言われます。

ビジョンは、企業が外部へ発信する「こうありたい」と目指す目標や志のことで、ミッションは、企業が内部に浸透させるべきビジョンを実現するために果たさなければならない使命や目的のことであり、ミッションを理念として掲げている企業も多いのではないでしょうか。

イソップ寓話「3人のレンガ職人」は、同じレンガ積みという仕事であっても、ミッションすなわち使命や目的を持つことが、モチベーションに大きな影響を与えることを教えてくれているのだと思います。

社員が日々従事していることに大きな意義を与えることは、企業の重要な使命だと思うのです。

 

 

経営哲学

本田宗一郎は、こう語りました。

「私の哲学は、技術そのものより思想が大切だというところにある。思想が具現化するための手段として技術があり、また良き技術の無いところからは、よき思想も生まれえない。人間の幸福を技術によって具現化するという技術者の使命が私の哲学であり、誇りである。」

「しっかりした思想と哲学を持たない企業はこれから先も潰れていくだろう。」

 

本田宗一郎が語るところの経営哲学とは何でしょうか?

一般的には、企業が経営される場合において経営者自らが示している、それをどのような目的でどのような形式で行っていくかという独自の概念である、などと定義付けされます。

哲学とは、さまざまな物事の本質をとらえる営みだと考えています。

とすれば、経営哲学とは、経営者が「経営の目的は何か?」と深く洞察することであり、経営するうえで経営者が示すべき経営の本質であろうと思うのです。

 

多くの社員の価値観、判断基準、優先順位がトップと一体系のなかにある企業は強い

経営者の経営哲学と社員の人生観が一体系のなかにある企業は強い

社員と価値観を共有できている企業は強い

 

経営理念は、置き物でも飾り物でもなく実践するためにあり、日々の経営は理念を実現するプロセスでなければならないと思います。

そのためには、経営理念は、社員1人ひとりが

①トップの信念、②評価の基準、③社員の生き方の座標軸

 

を体感できる内容であるべきなのでしょう。

 

よりよく人生を生きる。成長する。

より社会に貢献する。

「こんな生き方をしよう。」経営理念は、そう語りかけられるものでありたいと思っています。

 

本田宗一郎は、こう語りました。

「哲学のない人は、経営は無理に決まっている。機械には、燃料と潤滑油を与えれば動くが、哲学のない経営者のもとでは人が良く動かないからである。」

 

理念経営 その弐

「志を立てて以て万事の源と為す」

志を立てることから、すべては始まる。

松蔭は、どんなに才能があろうと、知恵に秀でていようと、そんなものは全く当てにならないのであって、とくかく志さえ立てたなら、人はどんな遠くへも行け、どんな困難なことも成し遂げられるのだと堅く信じて、人々に語り続けました。

この後に続いて松蔭はこのように述べています。

「志を立てることから、すべては始まる。そして交際する人を選ぶ。それが仁義を行う助けとなる。さらに書を読んで、古の偉人から教訓を学ぶ。この3つが実践できるなら、立派な成人になれる。」

 

このような松蔭の教えが受け継がれ、松蔭が亡くなった後も明治維新は遂行されました。

松蔭は志半ばで処刑されたとも言えますが、門徒生によって松蔭の志は達成されたとも言えます。

社員全員が一丸となって同じ頂を目指すには、松蔭のように自分の信じるところを語り続ける必要があるのではないでしょうか。

その信じるところが理念なのだろうと思うのです。

 

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