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消費者対策

行政監督庁による企業への規制・監視は、近年の多くの消費者被害事件の影響もあって強化される傾向にあります。企業の消費者保護法令への対応が不十分で、マスコミに取り上げられた場合、企業の存立を危うくする事態にもなりえます。企業にとって、消費者保護法令を意識したコンプライアンス体制を構築することの重要性は、年々高まっていると言えます。

消費者対策

消費者契約法への対応

消費者契約とは消費者と事業者との間で締結される契約をいい、ここに消費者契約法が適用されます。
消費者とは個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)、事業者とは法人その他の団体(及び事業として又は事業のために契約の当事者になる場合における個人)をいいます。

1.消費者契約を締結する際の注意点

事業者は、消費者に対し、重要事実について事実でない説明をしたり、断定的な判断を伴った説明をしたり、消費者にとって不利益な事実を告げないで説明して消費者契約を締結してはいけません。
これにより消費者が誤認していた場合は、消費者契約は取消しの対象となってしまいます。そこで、1)顧客勧誘を担当する営業社員の指導を徹底し、勧誘ルールを策定して浸透させる、2)顧客との間で言った言わないの水掛け論にならないよう、勧誘に際しての説明は録音しておくなどして証拠化することなどが必要です。

また、わざとでなくても事実と違うことを説明してはならないというものですので注意が必要です(不実の告知)。例えば、有名ブランドのバッグであるとの説明を受けて購入したが、後日、台湾の類似商品であることが判明した場合は取消事由となります。

不実の告知における重要事実が何であるかは、その事業者の提供する商品やサービス内容を理解しなければ判断しにくい事柄です。御社が提供する商品やサービス内容を弁護士に説明し、勧誘・営業過程に重要事実についての不実の告知・断定的判断の提供・不利益事実の不告知が存在しないかチェックを受けておくことをお勧めいたします。

2.契約書の注意点

事業者に有利であるとして契約書に盛り込んでいても無効となってしまうおそれがある条項として、以下の3つがあります。

①事業者の損害賠償責任を免除する条項の無効

消費者が損害を受けた場合に正当な額の損害賠償を請求できるように、事業者の損害賠償責任を特約で免除又は制限している場合には、その特約は無効と定められています。

②消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効

消費者の契約解除権を尊重し、消費者が正当な額の損害賠償を請求できるように、消費者が契約解除のときや契約に基づく金銭の支払義務の履行を遅滞した場合の違約金の額を制限するに不当な条項を無効とすることでというものです。

③消費者の利益を一方的に害する条項の無効

消費者契約法10条は、消費者の利益を一方的に害する条項がある場合、民法、商法その他の法律の任意規定の適用による場合に比べ、消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する特約で、その程度が信義誠実原則に反するものは無効となります。
以下に、消費者の利益を一方的に害する条項にあたる例を挙げておきます。

(ア)消費者からの解除・解約の権利を制限する条項

(イ)事業者からの解除・解約の要件を緩和する条項

(ウ)消費者の一定の作為または不作為により、消費者の意思表示がなされたものまたはなされなかったものとみなす条項

(エ)事業者の証明責任を軽減し、または消費者の証明責任を加重する条項

(オ)消費者の権利行使期間を制限する条項

以上のとおり、自社に一方的に有利な契約書を作ったとしても、消費者契約法に違反し問題が起こることがあります。仮に、基本契約の一部が無効である場合、多くの消費者との契約が無効になってしまう可能性があるのです。
したがって、契約書の作成は慎重を期する必要があり、事業者に有利な内容が果たして違法とならないのか、消費者契約法に詳しい弁護士に相談するのが望ましいでしょう。

特定商取引法への対応

1.特定商取引法の適用範囲

特定商取引法は、以下の7種類の取引について適用があります。

①訪問販売

②通信販売

③電話勧誘販売

④特定継続的役務提供(以下の指定6業種が対象)
エステティックサロン(1か月を越えて5万円を超える契約)、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービス(2か月を越えて5万円を超える契約)の6業種

⑤連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)

⑥業務提供誘因販売取引(いわゆる内職商法やモニター商法)

⑦ネガティブオプション(いわゆる送りつけ商法)

特定商取引法対応の注意点

2.特定商取引法対応の注意点

①書面交付義務の履行

特商法にはクーリング・オフ制度があり、事業者は全額返金のリスクを負っています。クーリング・オフ制度は、法定書面交付義務(概要書面と契約書面の交付義務)と密接に関係しており、書面に重大な不備がある場合には、書面交付義務が履行されていないことになり、消費者はいつまでもクーリング・オフをして全額返金を求めることができることになります。
顧客がクーリング・オフ期間を過ぎてからクーリング・オフを主張する場合、法定書面(概要書面・契約書面)の不備を指摘して、法定書面不交付によるクーリング・オフ期間未経過を理由とすることがほとんどです。そのため、書面交付義務の履行は最大の注意点であり、法定書面に必要的記載事項が書かれているかを慎重にチェックして基本となる契約書を作成する必要があります。

②勧誘・広告規制の遵守

特定商取引法には、広告規制や勧誘に際しての行為規制が多く定められていますので注意が必要です。
顧客からの契約時に言われた事実と実際が違うとの苦情は、不実の告知の主張に発展する可能性が高いです。契約時の説明内容は必ず記録化して、言った言わないの紛争を防止します。また、従業員を指導し、セールストークと不実告知の境をきちんと把握させることが重要です。
したがって、顧客勧誘を担当する営業社員の指導を徹底し、勧誘ルールを策定して浸透させ、顧客との間で言った言わないの水掛け論にならないよう、勧誘に際しての説明は録音しておくなどして証拠化することなどが重要となります。

③中途解約金紛争の防止

中途解約金の計算方法が不明確な場合にはクーリング・オフの問題となってしまうので、法定書面作成段階で細心の注意が必要です。既に提供された役務をどのように評価するのかは極めて難しい問題ですので、事前に弁護士に相談することをお勧めします。