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労務・労働問題12労務環境

ここでは、労務環境に関する注意点について説明いたします。

傷病休業からの復職

「休職」とは、ある従業員について労務に従事させることが不能又は不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対して労働契約関係そのものは維持させながら労務への従事を免除すること又は禁止することをいいます。

かかる「休職」のうち、「傷病休職」とは、業務外の傷病による長期欠勤が一定期間(3ヶ月〜6ヶ月程度が通常)に及んだときに行われ、当該期間中に傷病から回復し就労可能となれば復職となり、他方、回復しないまま当該期間満了となれば自然退職又は解雇となるものをいいます。

傷病休業からの復職

では、いかなる場合に「治癒」したものといえるでしょうか。この点、復職の要件となる「治癒」とは、「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に服したときをいう」とされています。当該「治癒」の立証責任は、復職を希望する労働者側にあります。

病気療養のため現場監督業務の代わりに内勤業務を希望した労働者に対する無給の自宅待機命令について、最高裁は、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、…当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供することができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である」として、自宅待機命令を無効としています(片山組事件(最高裁平成10年4月9日労判736号))。

したがって、休職期間が満了した労働者に対して、かかる検討をせずに軽易な業務を提供しないまま自然退職又は解雇を行った場合には、解雇権濫用として無効となると考えます。

会社による受診命令

長時間残業等により社員が体調を崩し、精神疾患等を患った場合、会社は当該社員に対して安全配慮義務違反等に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

この点、労働安全衛生法66条の8第1項は、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保険師その他の厚生労働省令で定める者…による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。」としており、会社は、精神疾患のおそれのある社員に対して、精神科医等による診断・治療を受けさせる必要があります。

会社の就業規則中に、社員に対する専門医等の受診義務等を定めている場合、当該就業規則の内容が合理的であれば労働契約の内容となるため(労働契約法7条)、社員に対して受診命令を下すことができます。

これに対して、就業規則中に受診義務等を定めていない場合であっても、受診命令等が労使間の信義・公平の観念に照らし、合理的かつ相当な措置であれば、社員に受診命令等を命じることができる、とされています。

たとえば、京セラ事件(東京高裁昭和61年11月13日労判487号)において、裁判所は、会社が専門医の診断を求めることが、労使間における信義則ないし公平の観念に照らし、合理的かつ相当な理由のある措置であると評価される事案で、就業規則等に定めがないとしても指定医の受診を指示できる、と判示しています。

社員が会社による受診命令に従わない場合、例えば、精神疾患による能力不足を理由とする普通解雇事由に該当するものとして、当該社員を解雇することが考えられます。

もっとも、精神疾患が業務に起因する場合、療養のための休業期間及びその後30日間は、会社は原則として当該社員を解雇することはできません(労基法19条1項)。

また、かかる解雇制限の適用を受けない場合であっても、判例上、解雇権濫用法理に基づき一定の制限を受けますのでご注意ください。