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労務・労働問題9就業規則・雇用契約書・人事評価制度

就業規則は、労働者が就業上遵守すべき規律や労働条件に関する内容について定めた規則のことをいいます。就業規則について、労働基準法は、常時10人以上の従業員を使用する使用者の作成を義務づけています(同法89条)。
就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、その制度を置く場合は就業規則に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)と、記載するか否かが自由な事項(任意記載事項)があります。

労務・労働問題【就業規則・雇用契約書・人事評価制度】

絶対的必要記載事項

始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

相対的必要記載事項

その制度を置く場合、以下の項目は就業規則に記載しなければなりません。

退職手当の定めをする場合:適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合:これに関する事項 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合:これに関する事項 安全及び衛生に関する定めをする場合:これに関する事項 職業訓練に関する定めをする場合:これに関する事項 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合:これに関する事項 表彰及び制裁の定めをする場合:その種類及び程度に関する事項 上記の他に当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合:これに関する事項

任意的記載事項

任意記載事項として、就業規則の目的、服務規律等について、記載することがあります。
就業に関するルールは、一つの就業規則にすべてを記載する必要はなく、別規則を定めて記載しても差し支えません。多くの企業では、就業規則(正社員用、契約社員用、パートタイマー用)というタイトルの規則の他に、賃金規定、育児休業規定、介護休業規定、個人情報保護規程、特定個人情報保護規定(マイナンバー関連)、私有車両通勤規定等の各種規程類を整備しています。

雇用契約書

雇用契約書とは、使用者と労働者との間の雇用条件について記載された契約書です。
労働者保護の観点から、労働基準法上、労働者に対して、法律所定の労働条件を明示する義務がありますが、雇用契約書を取り交わす義務はありません。
しかし、トラブル防止の観点からは、企業側はできるだけ雇用契約書を作成すべきだと考えます。
雇用契約書は、使用者、労働者の双方が契約内容について、署名押印を行うものです。したがって、雇用契約書は使用者と労働者との合意内容を証明するものとなるので、労働条件に関するトラブルの未然防止に資する効果がありますので、就業規則と合わせて作成される方が望ましいでしょう。

雇用契約書

例えば、未払賃金をめぐる労働裁判では、定額残業制の有効性が問題となることがよくあります。
このような場合、使用者が就業規則や雇用契約書において、通常の賃金部分と割増賃金部分を明確区別しておかなければ、無効と判断されることがほとんどです。
また、解雇をめぐる裁判では、解雇事由について、就業規則等で明示しておかなければ不当解雇と判断される可能性が高いです。
また、就業規則において重要なことは、策定するだけではなく、それを所轄の労基署に届け出ることと、労働者に周知することです。
特に、周知されていなければ、就業規則の効力は発生しません(最判平15.10.10)
周知されていないという反論を防止するためには、雇用契約書を締結しておくと良いでしょう。一方的な通知文書である労働条件通知書と異なり、雇用契約書は労働者の署名押印があります。そのため、「雇用契約の内容を知らない」などという反論が不可能となるのです。

このように、就業規則や雇用契約書は、企業経営にとってとても重要です。
会社は、持続的な成長のために、十分な時間と労力をかけて、最適な就業規則を策定すべきです。就業規則の見直しは、労働問題に詳しい弁護士へご相談されることをお勧めいたします。

人事評価制度

自社にとって最もふさわしい人事評価制度を構築し、順調に運用することは、経営者にとって重要かつ永遠の課題の1つです。それは人事評価制度の設計と運用次第で、企業業績が大きく左右されるからです。
人事評価制度は、職業能力の発揮・開発意欲を動機付けるという、人事労務管理そのものの目的と整合しなければなりません。多種多様な価値観やニーズを持つ個々人の意欲を上手く引き出すような人事評価制度の設計と運用こそ、人的資源の効率的な活用、ひいては企業の生産性向上のために不可欠なのです。
昨今「働き方改革」というワードを耳にしますが、今日の企業には「人事への投資」が必要不可欠だと考えています。価値の高い仕事をする社員に対してフェアな評価をすることによって生産性は向上し、労働時間の削減など働く環境も良くなるのです。
当事務所では、育成型人事評価制度を構築し、会社の人材育成・業績アップを実現するためのサポートもいたします。

以上のような人事評価制度を整備することで、会社を発展させる武器として利用するとともに、就業規則や雇用契約書を整備しておくことで、前述のとおり裁判等のトラブルから会社を護る盾とすることができるのです。