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労務・労働問題8セクシャルハラスメント

セクハラとは

法律では、職場における「セクハラ」について、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定しています(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条)。
例えば、上司が部下の女性従業員に対して、「頑張って!」と言いながら肩を叩いた場合、それが必ずしもセクハラになるわけではありませんが、当該従業員が抗議を行ったことに腹を立てて厳しく叱責したり、繰り返して当該従業員の就業環境が害された場合、セクハラになり得るでしょう。

セクハラとは

また、セクハラを犯罪であると誤解されている方も多くいらっしゃいますが、セクハラを犯罪として直接罰する法律はありません。
非常に悪質な場合は、強姦罪(刑法177条)、強制わいせつ罪(刑法第176)として刑法により処罰されるケース、悪質な誹謗中傷であった場合は名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(第231条)となるケース、わいせつな画像を常時パソコンに表示した場合は、わいせつ物陳列罪(第175条)として刑法に抵触するケースもあるでしょう。

しかし、「セクハラ裁判」と言われているのは、民事訴訟により加害者等に対して損害賠償請求を求めているものであり、加害者に対しては、不法行為による損害賠償請求(民法709条)や精神的損害による慰謝料請求(民法710条)、また事業主等に対しては、法人の不法行為による損害賠償請求(民法44条)、債務不履行による損害賠償請求(民法415条)、使用者責任に基づく損害賠償請求(民法715条)を行うものが大半となっています。

セクハラ苦情への対応

従業員からセクハラを受けているとの苦情があった場合、対応に困ってしまう企業が少なくありません。セクハラに対して、配慮を怠った不適切な対応を行ってしまった場合、会社が訴えられる可能性も十分に考えられます。
例えば、セクハラを受けているという女性社員の申告にもとづき、セクハラ行為をしたとされる男性社員の事情をよく聞かずに解雇した場合には、「解雇権の濫用」を理由として裁判所に訴訟等を提起される可能性があります。一方で、女性社員がセクハラを申告したにもかかわらず、セクハラに当たるほどのものではないとして、何ら適切な処置を講じなかった場合にも、会社が女性から損害賠償責任等を負う可能性があります。
このような事態を避けるために、セクハラの申告を受けた時点で労働諸法に詳しい弁護士に相談してアドバイスを受けるのが良いでしょう。セクハラ問題に関する弁護士のサポートは以下のようになります。

①法的アドバイス

当該行為がセクハラ行為にあたるか セクハラ行為があったとすればどのような処分が適切か セクハラ行為でなかったとすれば、その後従業員にはどのように対応すべきか 等を専門的観点より適確にアドバイスします。

②示談交渉

セクハラ行為を受けたと申告してきた社員、またはセクハラ行為を行ったとして処分等を受けた社員が、会社の対応に不満を持ち、不適切だったとして争ってきた場合には、弁護士が会社に代わって交渉にあたります。

③訴訟

示談交渉がうまくいかず、訴訟を提起されてしまった場合には、弁護士が会社の対応が適切であったことを代弁して戦います。

セクハラ対策の義務化

平成11年度の改正男女雇用機会均等法によって、事業主にはセクハラ防止措置を講じる義務が課せられました。防止措置の例を以下に挙げました。

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

職場におけるセクハラの内容・職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。 セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

②相談(苦情含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口をあらかじめ定めること。 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また広く相談に対応すること。

③事後の迅速かつ適切な対応

事実関係を迅速かつ正確に確認すること。 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)。

④その他措置

相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

セクハラの防止措置は、企業の規模や職場の状況の如何を問わず、必ず講じなければなりません。
企業にはセクハラを防止する措置を講じることと、セクハラの申告があった場合には、迅速かつ適切に対処することが求められます。これを怠ってセクハラ問題に関する訴訟を提起されてしまった場合は、会社の怠慢な対応が世間に公表されることになり、内外ともに会社の信用を失うことにもなりかねません。
大きな問題となる前に、セクハラに詳しい弁護士に相談することをお勧めします。